June, 30, 2025, 東京--OKIは、CFB(Crystal Film Bonding、)技術を用いたタイリング「CFB」技術を開発した。同技術は、これまで難しかった小口径の光半導体ウエハーから300mmシリコンウエハーへのウエハーサイズの壁を越えた異種材料集積を実現し、急速に拡大する光電融合技術の発展に貢献する。今後はパートナー企業や大学との協業を通じ、早期実用化を目指す。
OKIが開発したタイリング「CFB」技術は、異なるウエハーサイズ間のギャップを克服し、ダメージなく異種材料集積を実現するものである。この技術は、2インチInPウエハー1枚から300mmシリコンウエハー全面に52回のタイリングが可能であり、InP系結晶薄膜材料を効率的に活用できる。転写後のInPウエハーはそのまま再利用できるため、リサイクルやリユースも可能で、環境負荷の低減にも貢献する。また、位置精度は±約1µmで、角度精度は±約0.005°。この精度により、OKI独自のシリコンフォトニクス技術「立体交差導波路」と組み合わせることで、光半導体とシリコン導波路間の高効率な光結合を実現できる。
実証実験では、2インチInPウエハー上に犠牲層および光半導体として機能するInP系結晶薄膜をエピタキシャル成長させ、素子ごとに分離した。各素子には、犠牲層エッチング時の薬液浸食から保護するための保護構造と、一括転写用の支持体を形成した。これにより、InP系結晶薄膜素子は浸食なく中間転写基板へ一括転写ができた。中間転写基板への一括転写は、シリコンウエハーを除去プロセス中のダメージから保護することを目的としている。中間転写基板上で保護構造と支持体を除去することで、これらの除去プロセスでシリコンウエハーへダメージがおよぶことはない。また、中間転写基板の独自構造により、保護構造および支持体の除去プロセス時にInP系結晶薄膜素子が剥がれず接合状態を維持し、転写時にはInP系結晶薄膜素子を容易に転写することが可能である。
さらに、中間転写基板から「CFB」スタンプを用いて繰り返し転写を行うことで、300mmシリコンウエハー全面へのタイリング「CFB」技術を実現した。「CFB」スタンプは必要な素子のみを選択的に転写できる構造であり、繰り返し転写により効率的なタイリングが可能。また、中間転写基板上に高密度ピッチで配置された素子アレイから、デバイスに必要な低密度ピッチの素子アレイを繰り返し転写できるため、材料を無駄なく活用できる。今回使用した「CFB」スタンプのサイズは30mm×30mmで、300mmシリコンウエハー全面への転写回数は52回、所要時間は約10分と、実用的な生産性を有している。
今回、2インチから300mmシリコンウエハーへのタイリング「CFB」技術を実証した。この技術は3インチや4インチのInPウエハー、200mmシリコンウエハーなどにも柔軟に対応可能である。また、既存の光半導体製品にも応用でき、高放熱基板への転写による性能向上や、大口径化による生産性向上にも寄与する。
タイリング「CFB」技術は、拡大する光電融合技術の発展や環境負荷低減にも貢献する。今後OKIは、デバイスメーカーとの連携を強化し、この技術の早期実用化を目指す。
なお、OKIは2025年6月29日開催の「30th OECC/PSC 2025」(札幌・WS1-9)および、2025年8月1日開催の「COMNEXT」(東京ビッグサイト・セミナーFOE-9)にて、この技術を説明予定である。
(詳細は、https://www.oki.com)