Science/Research 詳細

3Dプリンタは、部品の起源を明らかにする隠された「指紋」を残す

June, 20, 2025, Urbana-Champaign--新しい人工知能システムは、3Dプリントされた部品の起源を、それらを製造した特定の機械にまで特定する。この技術により、製造業者はサプライヤーを監視し、サプライチェーンを管理し、問題を早期に検出し、サプライヤーが合意されたプロセスに従っていることを確認できる。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)の機械科学・工学教授Bill Kingが率いる研究チームは、アディティブ・マニュファクチャリング(3Dプリンティング)で作られた部品には、その部品を製造した特定の機械から独自の特徴があることを発見した。これをきっかけに、部品の写真から署名、つまり「指紋」を検出し、その起源を特定するAIシステムを開発した。
「これが機能することに、われわれは今でも驚いている。同じ部品設計を2台の同一のマシン(同じモデル、同じプロセス設定、同じ材料)でプリントでき、各マシンには固有の指紋が残り、AIモデルがマシンに遡ることができる。何かがどこでどのように作られたかを正確に判断することが可能だ。サプライヤーの言葉を鵜呑みにする必要はない」とKingはコメントしている。

この研究の結果は、NatureのパートナージャーナルであるAdvanced Manufacturingに掲載された。

Kingによると、この技術はサプライヤー管理と品質管理に大きな影響を与える。製造業者が製品の部品を製造するためにサプライヤーと契約する場合、サプライヤーは通常、特定の一連の機械、プロセス、および工場手順を順守し、許可なしに変更を加えないことに同意する。ただし、この規定を施行することは容易ではない。サプライヤーは、製造プロセスから使用される材料まで、予告なしに変更を加えることがよくある。通常は無害だが、最終製品に大きな問題を引き起こす可能性もある。

「現代のサプライチェーンは信頼に基づいている。関係の開始時には、監査やサイトツアーの形でデューデリジェンスが行われる。しかし、ほとんどの企業にとって、サプライヤーを継続的に監視することは現実的ではない。製造プロセスの変更は長い間見過ごされがちで、不良品のバッチが作成されるまで気付かないことがある。製造業で働く人なら誰にでも、サプライヤーが勝手に何かを変えて深刻な問題を引き起こしたという話がある」(King)。

3Dプリンタの再現性を研究する中で、Kingの研究グループは、部品寸法の公差が個々の機械と相関していることに気づいた。これをきっかけに、研究チームは部品の写真を調べることにした。その結果、部品を製造した特定の機械、製造プロセス、および使用された材料、つまり生産の「フィンガープリント」を特定できることがわかった。

「これらの製造指紋は、ありふれた視界に隠れていた。世界には数千台の3Dプリンタがあり、飛行機、自動車、医療機器、消費者製品、その他多くのアプリケーションで数千万点の3Dプリント部品が使用されている。これらの各部品には、AIを使用して検出できる一意のシグネチャがある」とKingはコメントしている。

Kingの研究グループは、スマートフォンのカメラで撮影された写真からプロダクションのフィンガープリントを特定するAIモデルを開発した。AIモデルは、6社の21台の機械で4つの異なる製造プロセスで作られた9,192個の部品の写真で構成される大規模なデータセットに基づいて開発された。モデルをキャリブレーションしたところ、研究者たちは、部品の表面のわずか1㎟から98%の精度でフィンガープリントを取得できることを発見した。

「われわれの結果は、AIモデルがわずか10個のパーツでトレーニングすれば、正確な予測を行えることを示唆している。サプライヤーからのわずかなサンプルを使用して、彼らが後に納品するすべてのものを検証することができる」(King)。

Kingは、このテクノロジーがサプライチェーン管理を抜本的に見直す可能性を秘めていると考えている。これにより、メーカーは生産の初期段階で問題を検出し、エラーの原因を特定するために必要な時間とリソースを節約できる。この技術は、違法商品の出所を追跡するためにも使用できる。