Science/Research 詳細

コスト効率の高いQCLモジュールの半自動製造プロセス開発

June, 13, 2025, Freiburg--FraunhoferIAFは、共振チューナブル量子カスケードレーザモジュール(MOEMS-EC-QCLs)の半自動製造プロセスを開発した。
このレーザ技術は、非常に広範で極めて高速なスペクトルチューナビリティを特徴としており、様々な業界でのリアルタイム分光法およびインライン測定システムを可能にする。このプロセスにより、モジュールの製造が大幅に加速され、コストが削減される。
2025年6月24~27日まで、Fraunhofer IAFは、ミュンヘンのLaser World of Photonics(ホールA3、ブース431)で、マルチコアシステムを例にプロセスを展示する。このシステムは、4つのモジュールを多重化して組み合わせ、毎秒100万波数以上の有効スペクトル測定速度を実現する。

共鳴波長可変量子カスケードレーザ(QCL)は、中赤外(MIR)範囲の幅広い分光アプリケーション向けの高性能レーザ光源である。その高い輝度により、測定時間を最小限に抑え、より正確で効率的な特性評価プロセスを実現し、化学・製薬業界、医療、セキュリティ技術などで使用できる。しかし、これまでQCLモジュールの製造は比較的複雑で高価だった。

そのため、FraunhoferIAF応用固体物理学研究所は、外部光共振器(EC)内のMOEMS(micro-opto-electro-mechanical system)グレーティングスキャナを使用してQCLモジュールの製造を大幅に簡素化する半自動化プロセスを開発し、よりコスト効率が高く、産業界にとって魅力的なものにした。MOEMS-EC-QCL技術は、Fraunhofer IAF がFraunhofer フォトニック マイクロシステム研究所 IPMS と共同で開発された。

工業プロセスにおけるインライン測定
「MOEMS-EC-QCLの市場ポテンシャルは計り知れない。MOEMS回折格子の使用によるスペクトル調整性と組み合わせた高い輝度により、FTIR分光法に基づく測定方法のさらなる開発とインライン測定技術への使用が可能になる」と、FraunhoferIAFのレーザ測定技術グループリーダー、Dr.Marko Haerteltは説明している。

「われわれは今、コストと可用性の点で技術を業界対応レベルに引き上げることができた。一方では、MOEMS-EC-QCLモジュールの生産を半自動製造ベースとし、他方、スケーラブルなアプローチを使用して、モジュールを補完的なスペクトル範囲と結合する。後者は、MIRの全範囲をカバーするために必要な様々なモジュールの数を4~11µmに大幅に減らし、必要な規模の経済を達成する」とHaerteltは強調している。

量子カスケードレーザの半自動生産
MOEMS-EC-QCLの普及には、高い製造コストが主な障害となっており、これまではモジュールを積極的に調整する必要があったため、手作業でしか組み立てることができまなかった。開発されたプロセスは、ピック&プレースシステムの助けを借りて、重要な部品のMOEMS-EC-QCLの組み立てプロセスを自動化し、製造コストを大幅に削減する。

さらに、FraunhoferIAFは、複数のレーザ光源をマルチコアシステムに効率的に組み合わせるための柔軟でスケーラブルな方法を開発した。個々のQCLモジュールのスペクトル幅は限られている。モジュールを補助的なスペクトル範囲と組み合わせることで、毎秒100万波数を超える有効なスペクトル測定速度を達成するアプリケーション固有のマルチコアシステムを構成できる。

より効率的な組み立てと組み合わせのプロセスにより、QCL技術の利点は、特に中小企業(SMEs)に初めて広く利用できるようになる。

MOEMS-EC-QCLsの利点と応用分野
MOEMS-EC-QCLsは、4〜11μmの中赤外波長範囲での広範なスペクトルチューナビリティと高いスペクトル輝度を特徴としている。これらは、幅広い分光法(透過、後方散乱、ATR、マイクロ流体、ポイントオブインタレスト分光法)に適しており、完全な赤外スペクトルをわずか1ミリ秒で記録できる。

MOEMS-EC-QCLsの潜在的な適用分野は、それに応じて多様である:例えば、エピタキシャル層の厚さとその組成を決定するための半導体測定技術、化学反応を最適化するためのプロセス分析、コーティングをテストするためのプロセス制御、危険物質や中毒物質を検出するセキュリティ技術、および製薬業界での品質保証に使用できる。