May, 26, 2025, 東京--東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、赤色レーザダイオード(LD)を光源とすることで、植物の光合成と成長を飛躍的に促進できることを、世界で初めて明確に示した。
これまでの植物栽培では、発光ダイオード(LED)が人工光源として主流だったが、LEDは広い波長帯域(半値幅: 20〜50 nm)で発光する一方、LDは波長帯が極めて狭く発光するという特性がある(半値幅: 1〜5 nm以下)。この研究では、LDの狭波長帯光を植物の主な光合成色素であるクロロフィルの吸収ピークに一致させることで、光合成における光エネルギー変換効率を最大化できることを実証した。
タバコ、シロイヌナズナ、レタスの3種を対象に行った比較実験では、いずれの植物においてもLD照射によって光合成効率および成長指標が大幅に向上した。さらに、LED照射では24時間×12日間の連続照射により葉の黄化や光阻害が生じたのに対し、LD照射ではそれらのストレス症状はほとんど見られないことも明らかになった。
この研究成果は、植物工場や閉鎖型環境、さらには宇宙農業といった先端的な栽培システムにおける次世代型の光戦略に革新をもたらす可能性を示している。今後は、青色など他波長のLDとの組み合わせや、より多様な作物への応用展開に向けた検証が期待される。
(詳細、https://www.a.u-tokyo.ac.jp)