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ロボットハンドは、人間のような握りで物体を動かす

May, 23, 2025, Lausanne--EPFLで開発されたロボットハンドは、プログラミングではなく、柔軟性のある材料と構造により、人間のような動きを自然に生み出し、24種類の異なる物体をつかむことができる。

ボトルのような物体をつかむために手を伸ばすとき、通常、空間内のボトルの正確な位置を知る必要はない。しかし、EPFLの研究者Kai Jungeが説明するように、ボトルをつかむロボットを作りたいのであれば、周囲の環境について非常に正確にあらゆることを知る必要がある。

「人間は、物体をつかのにそれほど外部情報を必要としない。それは、物体と人間の手との間のインタフェースで起こる柔軟な、またはソフトな相互作用によるものだと考えている」と、Josie Hughesが率いるSchool of Engineering’s Computational Robot Design & Fabrication (CREATE) LabのPh.D学生であるJungeは言う。「この柔軟性は、われわれがロボットのために探求したいと考えているものだ。」

ロボット工学では、コンプライアントな材料とは、変形したり、曲がったり、押しつぶされたりする材料を指す。CREATE LabのロボットハンドADAPT(Adaptive Dexterous Anthropomorphic Programmable sTiffness)の場合、コンプライアントな材料は比較的シンプルで、機械の手首と指に巻き付けられたシリコンのストリップと、ばね仕掛けの関節、曲げることが可能なロボットアームを組み合わせたものである。しかし、この戦略的に分散された柔軟性により、このデバイスは、プログラムされたものではなく、自動的に出現する「自己組織化」された把持動作によって、さまざまな物体をピックアップすることができる。

一連の実験では、遠隔操作が可能なADAPTハンドは、人間の自然な把持動作を68%の類似性で模倣した自己組織化把持動作を使用して、93%の成功率で24個の物体をつかむことができた。この研究成果は、Nature Communications Engineering誌に掲載されている。

「ボトムアップ」のロボット知能
従来のロボットハンドでは、各関節を作動させるためにモーターが必要だったが、ADAPTハンドには、20個の関節に対して手首に収納されたモーターは12個しかない。残りの機械制御は、硬くしたり緩めたりしてハンドの柔軟性を調整するばねと、追加または取り外しが可能なシリコン「皮膚」が行う。

ソフトウェアに関しては、ADAPTハンドは、物体を持ち上げるために、4つの一般的なウェイポイント(位置)を移動するようにプログラムされている。タスクを完了するためにさらに必要な適応は、追加のプログラミングやフィードバックなしで行われる。ロボット工学では、これを「オープンループ」制御と呼ぶ。例えば、ある動きをするようにロボットをプログラムすると、ロボットは1本のボルトからバナナまで、さまざまな物体に把持ポーズを適応させることができた。研究チームは、このロボットの空間的に分散したコンプライアンスにより、300回以上の把持でこの極端な堅牢性を分析し、それらを剛性ハンドと比較した。

「われわれは、脳のトップダウンの知能ではなく、皮膚、筋肉、関節などのさまざまな身体部分に分散した機械的知能を活用することに興味がある」(Kai Junge, CREATE Lab)。

「人間が自動的に行うインタラクションやタスクを実行できるロボットの開発は、ほとんどの人が予想するよりもはるかに難しい。だからこそ、われわれは、脳のトップダウンの知能ではなく、皮膚、筋肉、関節などのさまざまな身体部分に分散した機械的知能を活用することに関心がある」(Junge)。

コンプライアンスと制御のバランス
Jungeは、ADAPT研究の目標は、必ずしも人間のように把持できるロボットハンドを作ることではなく、ロボットがコンプライアンスだけでどれだけのことを達成できるかを初めて示すことだったと強調している。

これが体系的に実証されたので、EPFLチームは、閉ループ制御の要素をADAPTハンドに再統合することでコンプライアンスの可能性を高めている。これにはシリコン製皮膚に圧力センサを追加することで得られる感覚フィードバックや人工知能などが含まれる。この相乗的なアプローチにより、不確実性に対するコンプライアンスの堅牢性と閉ループ制御の精度を組み合わせたロボットにつながる可能性がある。

「コンプライアンス型ロボットの利点をよりよく理解することで、予測困難な環境や人間向けに設計された環境へのロボットシステムの統合が大幅に改善される可能性がある」(Junge)。