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膵臓ガンとの闘いにDNAオリガミが新たな可能性をガイド

May, 14, 2025, Champaign--膵臓ガンとの闘いにおける課題の1つは、臓器の密集した組織に浸透して悪性組織と正常組織の間の縁を定義する方法を見つけることである。新しい研究では、DNAオリガミ構造を使用して、正常細胞に影響を与えることなく、蛍光イメージング剤を膵臓ガン細胞に選択的に送達する。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)の機械科学・工学教授Bumsoo Hanとパデュー大学(Purdue University)のJong Hyun Choi教授が主導したこの研究では、イメージング色素パケットを運ぶ特別に設計されたDNAオリガミ構造が、膵臓ガン症例の95%に存在するヒトKRAS変異ガン細胞を特異的に標的にできることを発見した。

「この研究は、より正確なガン画像診断の可能性だけでなく、選択的化学療法の提供も強調している。これは、現在の膵管腺ガン治療よりも大幅に進歩している。外科的切除によるガン組織除去の現在のプロセスは、腫瘍縁のより正確な画像化によって大幅に改善できる」と、イリノイ州のガンセンターにも所属しているHanは説明している。

この研究の結果は、ジャーナルAdvanced Scienceに掲載されている。

DNAは長い二本鎖分子であるため、分子(この場合は蛍光イメージング色素)を所定の位置に保持するナノスケールスカフォールドに折り畳み、新しい合成分子構造を作成するのに理想的な候補である。

チームは、3Dプリントされた「腫瘍型」と、複雑な腫瘍微小環境を模倣したマイクロ流体システム(マイクロ流体腫瘍間質モデルと呼ばれる)を使用して膵臓ガンモデルを開発し、動物組織への依存を減らし、ヒトでの臨床使用への翻訳を加速した。ガン組織における折り紙構造の取り込みを調べるため、研究チームは腫瘍モデルに色素充填されたDNA構造を付加し、蛍光イメージングでその動きを追跡した。次に、ヒト膵臓腫瘍組織を持つマウスに色素送達構造を投与し、より生理学的に関連性のある条件でのDNAオリガミパケットの分布を調査した。

チームは、様々なサイズのチューブとタイル型のDNAオリガミ分子で実験した。その結果、長さ約70nm、直径約30nmのチューブ状構造と、長さ約6nm、直径約30nmのチューブ状構造は、周囲の非ガン組織に吸収されずに、膵臓ガン組織に最も多く取り込まれることが分かった。より大きなチューブ状の分子や、すべてのサイズのタイル状の分子は、同様に機能しなかった。

「DNAオリガミパケットのサイズと形状の違いが、ガン細胞と健康な細胞の取り込みにどれほど劇的に影響したかを見て驚いた」とHanは話している。「小さい方が蓄積が増えると考えていたが、サイズだけでなく形状にも一定のスイートスポットがあるようだ。」

次のステップは、Hanによると、正常細胞に影響を与えることなくガン細胞に選択的に送達するために、化学療法薬を充填した折り紙で折りたたまれたDNA分子の使用を模索することである。「人工腫瘍モデルを用いて動物の使用を減らし、創薬におけるトランスレーション(転換)を加速することも、われわれが非常に誇りに思っている方向性である。」
(詳細は、https://news.illinois.edu)