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東京大学、世界初のAI-to-AI通信技術

May, 13, 2025, 東京--東京大学大学院情報理工学系研究科の落合秀也准教授と、江崎浩教授、原遼佑学部生(研究当時)の研究グループは、次世代のユビキタス空間を実現するAI-to-AI通信技術を世界で初めて開発・実証した。

今回開発された技術は、電子機器に組み込まれたAI同士が直接対話し、協調して学習を進めることを可能にした。また、プライバシーにも配慮した設計が施され、安心して利用できる。
将来的には、AI-to-AI通信技術が普及することで、異なるメーカの電子機器同士がシームレスに協調できるようになる。産業分野への応用が期待される。

発表内容
AI 半導体の急速な進化により、近い将来、様々な電子機器に学習機能を備えた AI が搭載されることが予想されている。これにより、機器同士がより有機的に連携し、自律的に高度な機能を獲得できるようになる。
これまでの研究では、単一の電子機器内での AI 活用が主流だった。複数の電子機器が AI レベルで対話し、協力関係を築くことはほとんど考えられていなかった。
研究チームは、MIT が開発した Split Learningに着想を得て、独自に開発した AI-to-AI 通信技術を世界で初めてユビキタス環境に適用し、その有用性を確認した。
実験では、天井に設置されたカメラが室内の状況を観測し、4 種類の照明を自動制御する「Logic-Free Building Automation」システムを対象とした。従来、このような自動制御システムには複雑な制御ロジックの記述が必要だった。しかし、Logic-Free Building Automation はユーザの壁スイッチ操作を教師信号として学習し、最適な制御方法を自動的に獲得することができる。
研究では、このシステムを分散化し、AI-to-AI 通信技術を活用して協調制御を実現した。
将来的には、AI-to-AI 通信技術が普及することで、異なるメーカの電子機器同士がシームレスに協調できるようになる。例えば、A 社の天井カメラと B 社の空調機が AI-to-AI 通信を通じて連携し、最適な室内環境を提供することが可能になる。また、プライバシー保護の
観点でも優れており、ユーザデータを外部に持ち出すことなく学習・制御が行える。

今回の実証は家庭環境を対象としたが、今後は様々な産業分野への応用が期待される。
この研究成果は、2025年5月6日、国際会議「IEEE Conference on Artificial Intelligence 2025(米国電気電子学会)」にて発表された。
(詳細は、https://www.i.u-tokyo.ac.jp)