May, 8, 2025, Cambridge--ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学応用科学大学院(SEAS)の応用物理学者たちは、量子ネットワークに接続してノイズに敏感なマイクロ波量子コンピュータ用の堅牢な光インタフェースを作成できる光子ルーターを作成した。
このブレークスルーは、既存の通信インフラストラクチャを活用したモジュール式の分散型量子コンピューティングネットワークをいつか実現するための重要なステップである。数百万マイルに及ぶ光ファイバで構成される今日の光ファイバネットワークは、コンピューティングクラスタ間で情報を光のパルスまたはフォトンとして、瞬く間に世界中に送信する。
SEASのTiantsai Lin電気工学および応用物理学の教授Marko Lončarが率いるこのチームは、超伝導マイクロ波量子ビットを最小演算単位として使用する量子処理システム用に設計されたデバイスであるマイクロ波光量子トランスデューサを作成した(古典ビットの1と0に類似)。この研究成果は、Nature Physics に掲載されている。
このトランスデューサは、実質的に光子のルータであり、マイクロ波と光子の間の大きなエネルギーギャップを埋め、何マイルも離れた場所で生成された光信号でマイクロ波量子ビットを制御することができる。このデバイスは、光のみを使用した超伝導量子ビットの制御を実証した最初のデバイスである。
論文の筆頭著者で大学院生のHana Warnerによると、このトランスデューサは、量子ネットワークを夢見る際に光学の力を活用する方法を提供する。「これらのシステムの実現にはまだ道のりがあるが、そこにたどり着くためには、様々なコンポーネントを拡張し、インタフェースする実用的な方法を見つける必要がある。光フォトンは、それを実現するための最良の方法の1つ。と言うのは、フォトンは情報の非常に優れたキャリアであり、損失が低く、帯域幅が広いからだ」(Warner)。
超伝導量子ビットは、様々なエネルギー状態用に設計されたナノ製造された回路であり、そのスケーラビリティ、既存の製造プロセスとの互換性、および計算を実行するのに十分な時間量子重ね合わせを維持する能力により、新しい量子コンピューティングプラットフォームである。
しかし、超伝導マイクロ波量子ビットプラットフォームを展開する際の大きなボトルネックの1つは、動作温度が非常に低いため、希釈冷凍機と呼ばれる大型の冷却システムが必要になることである。将来の量子コンピューティングでは、動作するために数百万の量子ビットが必要になるため、これらのシステムをマイクロ波周波数の信号のみでスケーリングすることは困難である。解決策は、マイクロ波量子ビットを使用して量子演算を行うのではなく、効率的でスケーラブルなインタフェースとしてフォトンを使用することにある。
そこで、トランスデューサの出番である。
ハーバード大学のチームの2ミリ光学素子は、ペーパークリップに似ており、長さ約2㎝のチップの上に置かれている。これは、マイクロ波共振器を2つの光共振器とリンクさせることによって機能し、それらの基材であるニオブ酸リチウム(LN)の特性によって可能になるエネルギーの前後交換を可能にする。チームはこの交換を活用して、量子ビットの状態を制御するためのかさばる高温のマイクロ波ケーブルの必要性を排除した。
制御に使用されるのと同じデバイスを、量子ビットの状態を読み出したり、量子コンピューティングノード間で厄介な量子情報を頑丈な光のパケットに変換するための直接リンクを形成するために使用できる。このブレークスルーにより、超伝導量子プロセッサが低損失で高出力の光ネットワークで接続された世界に近づく。
「われわれのトランスデューサの次のステップは、光を使用してマイクロ波量子ビット間のもつれを確実に生成し、分布させることである」(Lončar)。
ハーバード大学のチームは、光学システムに関する専門知識と、研究者がトランスデューサをテストし、様々な実験をマッピングするための超伝導量子ビットプラットフォームを提供したRigetti Computingの共同研究者を組み合わせた。他の共同研究者はシカゴ大学とMITにいた。