高強度フルカラー造形が可能な3Dインクジェットプリンタ技術を開発

May, 7, 2025, 東京--株式会社リコーは、生体適合性を有し、高強度でフルカラー出力が可能なレジン成型物を3Dプリンタ技術により製造する手法を開発した。この研究成果は、歯科用補綴物やメガネフレームなど、意匠性ニーズが高いオーダーメイド製品への展開が期待できる。

今回、RICOHは、インクジェット技術を採用したマテリアル・ジェッティング方式(インクジェットヘッドから噴射した光硬化性樹脂を、紫外線で固めて積層する方式)をベースに、フィラーを独自配合したインクを開発し、独自設計したプリンティング・プロセスと組み合わせることで、高強度、高精度、フルカラーを両立した3Dプリンタ技術を実現した。
この技術は、様々な色調の造形物を高強度かつ高精度で出力できるため、従来の3Dプリンタでは実現できなかった多彩なカラーデザインを可能とする。また、造形物は生体適合性を有しているため、歯科用補綴物などの医療応用も可能であり、現在、株式会社コアデンタルラボ横浜で採用され、歯科業界への臨床応用の可能性検討が進められている。RICOHは、様々な業界への展開を視野に入れながら、将来的に欧米への展開を目指してR&Dを進めている。

2. 研究手法と成果
RICOHは、マテリアル・ジェッティング方式をベースに、インクやプロセスを改良することで、高強度なフルカラー造形の実現に挑戦した。この方式で使用するインクには、独自のフィラー(充填剤となる粒子)を添加することで強度を大幅に向上させつつ、インクジェットノズルからの吐出を可能にする特性を保持している。また、フィラーを含有した高強度なクリアインクとホワイトインクをメインに使用し、カラーインクは高濃度かつ所定の位置に少量配置することで、高強度とフルカラーの両立を実現している。さらに、モノマの配合を最適化することで、造形物の高い安全性を担保し、JIS T 10993-1に基づく生物学的安全性試験においても、問題がないことを確認している。

また、RICOHのマテリアル・ジェッティング方式3Dプリンタには、リコー製の6つのインクジェットヘッドが搭載されており、全てのインクが紫外線により硬化する。それぞれのインクジェットヘッドから、適切な量のインクを所定の場所に吐出し、紫外線を照射してインクを硬化させ、これらの工程を繰り返すことで、所望の色調を有する造形物が得られる。カラーインクはイエロー、マゼンタ、シアンの3色で構成されており、一般的なオフィスプリンタと同様に、幅広い色調の再現が可能である。

このように、この技術では高強度、高精細、高審美性を兼ね備えているだけでなく、生体適合性も有していることから、一般産業界への展開に留まらず、医療業界への展開も期待される。特に、審美性が求められるパーツにおいては非常に有用な技術であり、一例として、現在、株式会社コアデンタルラボ横浜にて採用され、薬事認証を取得のうえ、歯科業界への臨床展開が進められている。

歯科における優位性としては、現在市販されている歯科用3Dプリンタの中で最も高い力学的強度を有している点や、歯特有の色調グラデーションを再現できる点が挙げられ、仮歯に留まらず、長期使用を想定した差し歯（小臼歯まで）としての展開も可能となった。さらに、色調の異なるパーツを一括で同時に造形できるため、歯と歯肉が一体化した入れ歯を一括で造形することができ、歯と歯肉の境界も非常に綺麗な状態で仕上がる。

(詳細は、https://jp.ricoh.com)