May, 7, 2025, 東京--情報通信研究機構(NICT)及び住友電気工業株式会社(住友電工)は、標準外径(0.125 mm)の19コア光ファイバで、毎秒1.02ペタビット(Pbps)の1,808 km伝送(おおよそ札幌-福岡間の距離に相当)の実験に成功した。
この結果は、伝送能力の一般的な指標である「伝送容量と距離の積」に換算すると、1.86エクサビット/秒・kmとなり、標準外径の光ファイバにおける世界記録の更新となる。
標準外径の19コア光ファイバは、これまでに1Pbpsを超える伝送容量は実証されてきたが、1,000 kmを超える長距離の伝送までは実証されていなかった。今回、商用の光ファイバ伝送システムで利用されている複数の波長帯で損失低減を実現した標準外径の19コア光ファイバと、その光ファイバに対応した光増幅中継機能を開発できたことで、長距離大容量伝送の世界記録を達成した。今回開発した技術は、通信需要が高まる将来において、光通信インフラの通信容量拡大と長距離化の両面で大きく貢献すると期待される。
この成果の論文は、米国サンフランシスコにて開催された第48回光ファイバ通信国際会議(OFC 2025)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間2025年4月3日(木)に発表した。
今回の成果
今回、住友電工は標準外径の結合型19コア光ファイバの設計・製造を担当し、コアの構造と配置の最適化により、複数の波長帯域(C帯、L帯)で光ファイバの損失低減を実現した。NICTは19コアの信号を同時に増幅する機能を有する伝送システムの開発と実証を担当し、毎秒1.02ペタビット・1,808 kmの伝送容量・伝送距離を達成した。
伝送システムは、送信系、受信系、周回伝送系からなる。周回伝送系は、19コア光ファイバ、合波器/分波器、光増幅器、周回制御スイッチから構成される。19コア光ファイバ用の光増幅中継機能は、各コアの光信号に対応するように並列にした19台の光増幅器により実現される。19コア光ファイバの信号は、分波器により各コア用に分岐し、光増幅器により伝搬中の信号減衰が補償され、合波器により各コアの信号が再び光ファイバに入力される。
今回の実験では、送信系にてC、L帯における180波長の偏波多重16QAM信号を19コア多重して合計毎秒1.02ペタビットの光信号を生成し、1区間当たり86.1 kmの19コア光ファイバを19回周回させた。周回伝送後、受信系にて全コアの信号を一括で受信し、MIMOデジタル信号処理によってコア間の信号干渉を除去し、各波長のデータレートを測定した。総伝送容量は毎秒1ペタビットを超えており、また、総伝送距離は、おおよそ札幌-福岡間に相当する1,808 kmとなり、国内の大都市を結ぶネットワークに適用できることが実証された。伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、1.86エクサビット/秒・kmとなり、これは標準外径光ファイバの世界記録となる。
(詳細は、https://www.nict.go.jp)