Science/Research 詳細

ガラスの「見えない秩序」がテラヘルツ帯の揺らぎを決める

April, 24, 2025, 大阪--ガラスは一見すると無秩序に結びついた原子の集合体だが、X線や中性子線を用いて観察すると、わずかに周期的な構造「第一尖鋭回折ピーク(FSDP)」が観測される。また、ガラスのテラヘルツ(THz)帯の振動として観測される「ボゾンピーク(BP)」は、低熱伝導性や機械的性質、THz光の吸収特性に影響を与える。しかしながら、FSDPとBPとの関係は未解明だった。

大阪大学の研究は、材料の弾性のばらつきを考慮する不均一弾性体理論により、BPの発生がFSDPと密接に関係することを見いだした。また、理論が予測する最小の弾性不均一性とFSDPのスケールがほぼ一致し、FSDPがガラスのTHz帯振動特性を決定する重要な要因であることが示唆された。

研究成果は、ボゾンピークを制御した新たなガラス材料の開発につながると期待される。

研究の内容
研究では、代表的なガラスであるシリカガラス(二酸化ケイ素、SiO₂)とグリセロール(Glycerol、C₃H₈O₃)について、BPを定量的に解析した。その結果、両ガラスに共通して、BPの発生には、「弾性不均一性の空間相関長」と「弾性率の変動の大きさ」という2つの因子が重要であることが分かった。すなわち、ガラスの内部では、硬い領域と柔らかい領域が混在している。この弾性のばらつきが、どの程度のスケールで変化しているか(空間相関長)が、BPの周波数を決める鍵であり、FSDPがナノメートルスケールの空間相関長と深く関係していることが分かった。
また、ガラス内部の硬さのばらつき(弾性不均一性の大きさ)が、BPの強度や周波数に影響を与える。

この関係を詳しく調べるため、シリカガラスやグリセロールの他にも、様々なガラスを解析したところ、理論が予測する「最小の弾性不均一性のスケール」と、FSDPで観測される擬周期的な構造のスケールがほぼ一致することが分かった。さらに、どのガラスでも、両者のスケールはほぼ同じ大きさであることが確認された。

即ち、「理論が予測する弾性のバラツキの最小サイズ」と「実験で観測されるFSDPの周期サイズ」が密接に関係しており、FSDPが弾性不均一性の空間相関長の起源となっている可能性があることを示唆する結果となった。

(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)