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名古屋大学、世界最薄0.3mmの熱輸送デバイスを開発

April, 22, 2025, 名古屋--名古屋大学大学院工学研究科の長野方星教授、渡邉紀志特任准教授、佐々木純 博士前期課程らの研究グループは、ポーライト株式会社との共同研究で、厚さわずか0.3 mmで10W(10 W/cm2)の高熱フラックスに対応可能な「超薄型ループヒートパイプ」の開発に成功した。

ループヒートパイプはウィックと呼ばれる多孔質体(スポンジ構造)で生じる毛細管現象をポンプの駆動力に利用することで、電力を使用せずに半永久的に熱を輸送できる受動的冷却技術。

今回開発された超薄型ループヒートパイプは、2枚の銅箔をエッチング加工で流路を形成した後、銅粉末を焼結したウィックを組み込み、レーザ溶接により高精度かつ高強度に一体化されている。冷媒として水を使用し、充填率の異なる複数条件下で動作性能を評価した。また、モバイル機器への搭載を見据えて、水平方向に加えて上下・縦横方向の姿勢でも特性評価を実施し、いずれの姿勢においても10Wの熱を安定して輸送できることを確認した。

このデバイスの熱輸送能力は熱伝導性の高い銅の約45倍、グラファイトシートの約10倍高いことが明らかとなり、極薄ながら高い放熱能力を有することが実証された。これにより、スマートフォンやタブレットなどの小型・薄型電子機器における熱マネージメント技術の高度化に寄与することが期待される。

研究成果は、2025年3月24日付Elsevier B.V.の発行する学術雑誌『Applied Thermal Engineering』に掲載された。

要点
・世界最薄(厚さ0.3 mm)の熱輸送デバイス「ループヒートパイプ(UTLHP)」を開発。
・1 cm2あたり10 Wの高熱フラックスに対応し、全方向で安定動作。
・スマートフォンなどの次世代小型・薄型電子機器の放熱デバイスとして期待。
(詳細は、https://www.nagoya-u.ac.jp)