April, 21, 2025, Chalmers--データトラフィックの急増により、通信システムの容量に対する要求はますます高まっている。Natureに掲載された、スウェーデンのチャルマース工科大学(Chalmers University of Technology)の研究チームは、現在の光ファイバシステムの10倍/秒のデータを伝送できる新しいアンプを紹介している。このアンプは、小さなチップに収まり、医療診断や治療に使用されるものを含む、重要な様々なレーザシステムにおいて大きな可能性を秘めている。
AI技術の進歩、ストリーミングサービスの人気の高まり、新しいスマートデバイスの普及は、2030年までにデータトラフィックが倍増すると予想されている要因の一部である。この急増により、膨大な情報を管理できる通信システムの需要が高まっている。
現在、光通信システムは、インターネット、テレコム、およびその他のデータ集約型サービスに採用されている。これらのシステムは、光を利用して情報を長距離伝送する。データは、細いガラスファイバで構成された光ファイバを高速で移動するレーザパルスを介して伝送される。
情報の品質を高く保ち、ノイズに圧倒されないようにするには、光増幅器が不可欠である。光通信システムのデータ伝送容量は、増幅器の帯域幅、つまり増幅器が処理できる光波長の範囲によって大きく左右される。
「現在、光通信システムに使用されている増幅器の帯域幅は約30nm。しかし、われわれの増幅器は300nmの帯域幅を誇り、既存のシステムの10倍/秒のデータ伝送を可能にしている」と、チャーマーズ大学のフォトニクス教授、Natureに掲載された研究の筆頭著者Peter Andreksonは説明している。
小さく、感度が高く、パワフル
窒化ケイ素(SiN)で作られた新しいアンプは、最小限の損失で効率的に光を導く、いくつかの小さならせん状の相互接続された導波路を備えている。この素材と最適化された幾何学的デザインを組み合わせることで、いくつかの技術的な利点が達成された。
「このアンプの主なイノベーションは、他のどのタイプのアンプよりも効果的にノイズを低減しながら、帯域幅を10倍に増やす能力である。この機能により、宇宙通信で使用されるような非常に弱い信号を増幅することができる」(Peter Andrekson)。
さらに、研究チームは、わずか数㎝サイズのチップに収まるようにシステムを小型化することに成功した。
「小さなチップ上にアンプを構築することは新しい概念ではないが、これほど大きな帯域幅を実現したのはこれが初めてである」(Peter Andrekson)。
病気の早期発見に貢献
研究チームは、複数のアンプをチップに統合し、必要に応じてコンセプトを簡単にスケールアップできるようにした。光増幅器はすべてのレーザにおいて重要なコンポーネントであるため、Chalmersの研究者の設計は、広範囲で急速に波長を変化させることができるレーザシステムを開発するために使用できる。このイノベーションは、社会において多くのアプリケーションを開く。
「設計を微調整するだけで、可視光と赤外光の増幅も可能になる。これは、アンプが医療診断、分析、および治療のためのレーザシステムで利用できることを意味する。広い帯域幅により、組織や臓器のより正確な分析とイメージングが可能になり、病気の早期発見が容易になる」とPeter Andreksonはコメントしている。
このアンプは、その幅広いアプリケーションの可能性に加えて、レーザシステムの小型化と手頃な価格化にも貢献する。
「このアンプは、レーザにスケーラブルなソリューションを提供する。したがって、このアンプをベースにしたレーザは幅広い分野で利用できる。医学研究、診断、治療だけでなく、イメージング、ホログラフィ、分光法、顕微鏡法、およびまったく異なる波長での材料とコンポーネントの特性評価にも適用できる」(Peter Andrekson)。
アンプのポテンシャルに関するさらなる洞察
様々な波長の光は、多様なアプリケーションに役立つ。研究チームは、増幅器が1400〜1700nmの範囲の光通信スペクトル内で効果的に機能することを実証した。300nmの広範な帯域幅を持つこのアンプは、他の波長での使用にも適応できる可能性がある。
導波路の設計を変更することで、可視光(400〜700nm)や赤外線(2000〜4000nm)などの他の範囲の信号を増幅することが可能になる。その結果、長期的には、病気の診断、治療、内臓や組織の視覚化、外科手術など、可視光線や赤外光が不可欠な分野でアンプを活用できる可能性がある。