April, 4, 2025, 東京--情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所、アストロデザイン株式会社(アストロデザイン)及び株式会社フジクラ(フジクラ)は、4コア標準外径マルチコアファイバ8本を有するマルチコアファイバケーブルを開発し、非圧縮8K映像を扱う実システムに、超大容量データ伝送ユニットとして実装することに、世界で初めて成功した。
非圧縮8K映像システムでは、1映像当たり毎秒70ギガビット(Gbps)程度のデータを伝送する必要があり、1台の非圧縮8Kカメラごとに単芯のシングルモードファイバ1本が使われる。開発したマルチコアファイバケーブルは、直径3 mmのケーブル内に、2種類の標準外径(125 µm)シングルモード4コア標準外径マルチコアファイバを合計8本有しており、非圧縮8K映像システムで従来使われていた、単芯のシングルモードファイバ32本分に相当する。
今回、マルチコアファイバケーブルを用いた伝送ユニットを導入することにより、僅かしか余裕のない情報配管や建物内のスペースを通し、クリーンルーム内に設置された複数の8Kカメラからの大容量映像データを、別の建物に有る8K映像合成装置までの300 mを伝送し、安定したシステム動作を実現することに成功した。
この成果により、従来は導入が難しかった、情報配管や配線スペースに余裕のない建物内や建物間をまたいで、非圧縮8K映像システム等の大容量データ伝送が必要となるシステムを導入することが可能になる。
今回の成果
(1)4コア標準外径マルチコアファイバ8本を有するマルチコアファイバケーブルを開発
マルチコアファイバは、1本の光ファイバ内に従来は1つのみ配置されていた光信号伝送用のコアを複数配置することで、伝送容量の増大やケーブルの高密度化に貢献する先進的な技術である。今回使用されたマルチコアファイバは、従来のシングルモード(SMF)ファイバと同じガラス外径(125µm)及び被覆外径(250µm)の中に4つのコアを配置している。
マルチコアファイバでは、近接したコアから漏れた信号が他のコアに侵入し、干渉して信号品質が劣化するという課題がある。今回開発した4コア標準外径マルチコアファイバは、コア同士の信号干渉を低減するため、コアの配置や光学特性を最適化して設計した。この4コア標準外径マルチコアファイバは、NICT 高度通信・放送研究開発委託研究課題20301 「マルチコアファイバの実用化加速に向けた開発研究」(2018-2022)で培った設計・製造技術を応用することで実現している。
このマルチコアファイバケーブルは、外径3 mmの被覆内に4コア標準外径マルチコアファイバを合計8本実装しており、従来の光ファイバ32本分に相当する情報伝送が可能。また、試験目的として、信号干渉特性の異なる2種類のマルチコアファイバを実装している。さらに、マルチコアファイバの両端には光コネクタが成端されており、マルチコアファイバ多重分離器を介して、画像システムや短距離システムへの導入も可能である。
(2)非圧縮8K映像を扱う実システムにマルチコアファイバ伝送ユニットを実装
今回、マルチコアファイバケーブルを用いた伝送ユニットを開発し、8K映像システムに導入することにより、僅かしか余裕のない情報配管や建物内のスペースを通し、クリーンルーム内に設置された複数の8Kカメラからの大容量映像データを、別の建物に有る8K映像制御装置まで300 m伝送し、システム動作させることが可能になった。
マルチコアファイバケーブルを用いた伝送ユニットは、4コア標準外径マルチコアファイバ8本を有するマルチコアファイバケーブルと、各4コア標準外径マルチコアファイバと通常の単芯光ファイバ4本とを結合する、マルチコアファイバ用多重分離器から構成される。マルチコアファイバ用多重分離器は協力企業である株式会社オプトクエスト(代表取締役社長: 東 伸)によって開発された。
多重分離器はごく小さなレンズを用いた微少空間結合光学系を利用してマルチコアファイバの各コアと4本のシングルモードファイバとの接続を非接触にて接続している。この方式の利点はSMFをマルチコアファイバの各コアに合わせて各々最適に調整することが可能であり、結合誤差を極めて小さくできるため低損失であることと、多様なマルチコアファイバのコア数やコアピッチでも対応できる構成であること。さらに、光路中に光学部品接合用の接着剤等を使用しないことから信頼性が高く、耐パワー特性にも優れているという利点がある。そして、各部品の固定には高い信頼性が求められる光通信部品で実績のあるYAGレーザ溶接固定を用いている。
また、マルチコアファイバケーブルとマルチコアファイバ用多重分離器はマルチコアファイバ用接続コネクタを用いることでマルチコアファイバ同士の接続性を容易にしている。
このマルチコアファイバ用多重分離器及びマルチコアファイバ同士の接続技術はNICT高度通信・放送研究開発委託研究課題150 イ02 「革新的光通信インフラの研究開発 課題:マルチコアファイバ接続技術」(2011-2015)にて研究された成果が用いられている。
(3)既存情報配管や建物内部の僅かなスペースを用いてマルチコアファイバケーブルを敷設し、超大容量情報伝送を伴う8K映像実システムを安定動作
超高画質の8Kカメラの台数が多くなると、多くの光ファイバケーブルが、カメラと画像合成装置間等で必要になる。現代の建物内部や建物間の情報配管には、既に大量のEthernetケーブルや電力ケーブルが設置されていることがほとんどで、新たに何本もの光ファイバケーブルを追加設置するだけの充分なスペースを確保できない場合が多く、8K映像システム導入を難しくする原因となっていた。
今回、実システムに導入可能な、マルチコアファイバケーブルを用いた伝送ユニットを開発し、8Kカメラシステムへ導入した。これにより、僅かしか余裕のない情報配管や建物内のスペースを通し、クリーンルーム内に設置された複数の8Kカメラからの大容量映像データを、別の建物に有る8K映像合成装置までの300 mを伝送し、安定したシステム動作を実現することに成功した。
ケーブル数を極端に削減できることから中継ボックス内においても、僅かなスペースを利用して敷設することが可能となり、メンテナンス性も大幅に向上させることができる。また、大量で相当な配線長を敷設する必要があった通信ケーブル(例えばEthernetケーブル)等を飛躍的に集約でき、省電力、省スペース化を実現できる可能性があります。
この成果により、従来は導入が難しかった、情報配管や配線スペースに余裕のない建物内や建物間をまたいで、非圧縮8K映像システム等の大容量データ伝送が必要となるシステムを導入することが可能になる。
(詳細は、https://www.nict.go.jp)