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30Tbps超の大容量データと暗号鍵を多重伝送する量子鍵配送技術の実証に成功

April, 3, 2025, 東京--株式会社KDDI総合研究所(KDDI総合研究所)と東芝デジタルソリューションズ株式会社(東芝デジタルソリューションズ)は、盗聴が不可能な量子鍵配送方式(QKD方式)の暗号鍵をC帯に、大容量データ信号をO帯にそれぞれ割り当て、1心の光ファイバで多重伝送する技術を開発した。
また、同技術を用いて、QKD方式の暗号鍵と33.4Tbpsの大容量データ信号を80km伝送することに、世界で初めて成功した。

これまで、QKD方式を活用した通信の実用化に向け、暗号鍵を伝送する専用の光ファイバをなくすことを目的に、データと暗号鍵を1心の光ファイバで伝送する技術が開発されてきたが、伝送データが暗号鍵にノイズとして干渉するため、大容量データを伝送することが困難だった。今回開発された技術により、1心の光ファイバで従来以上に大容量通信ができるため、QKD方式の導入・運用コストを大幅に削減することが可能となり、データセンタ間の通信などでの早期実用化が期待される。

今回の成果は、2025年3月30日から4月3日まで開催される光通信技術に関する世界最大の国際会議OFC2025(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)の技術論文として報告する。

今後、データセンタ間通信では大容量化とともに機密性の高い情報をサイバー攻撃から守るセキュリティ対策の重要性がますます高まる。KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは引き続き、大容量かつセキュアな通信サービス実現に向けた研究開発を進める。

今回の成果
今回、O帯で伝送するデータ信号が、C帯で伝送するQKD方式の暗号鍵へ与える影響を分析・評価し、O帯伝送の光パワーや帯域幅を最適化しつつ、伝送後のO帯データ信号を増幅器で適切に増幅するパラメタを特定した。これにより、QKD方式の暗号鍵を伝送損失が少ないC帯で、大容量データ信号を超広帯域なO帯で多重伝送し、光ファイバ1心でQKD方式の暗号鍵と33.4Tbpsの大容量データ信号を、80km伝送することに成功した。
この成果は、QKD方式の暗号鍵とデータ信号の両方をC帯で多重伝送する従来技術に比べて、伝送容量においては約3倍、伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)においては約2.4倍高い性能となる。
(詳細は、https://www.kddi-research.jp)