Science/Research 詳細

固体表面に均一なナノ周期構造を形成~強度分布を制御したレーザによって高品位なナノ構造実現

March, 3, 2025, 東京--東京農工大学 大学院工学研究院先端物理工学部門の宮地悟代 教授、同大学大学院工学府化学物理工学専攻の住本 武優らの研究チームは、チタン表面に高強度のフェムト秒レーザパルスを照射するだけで、周期が490nmで一定で直線性の良いナノ構造体を、固体表面から直接削り出だせる技術を開発した。
この技術により、固体表面に撥水性や親水性のような力学的制御機能だけでなく、光の反射や吸収などこれまでにない光学的制御機能を容易に与えることができると期待される。

研究成果
研究チームはまず、中心波長1047 nm、パルス幅300フェムト秒(fs)のフェムト秒レーザパルスの強度分布を正方領域で均一になるように整形した。次に、そのビームを回折光学素子によって2つに分け、それらを加工面で重ねることにより、均一で直線性の良い周期1.9 µm(1900 nm)の干渉縞を発生させた。これらのビームによってチタン表面に独自技術、2ステップ加工法を行った結果、周期が490 nmで一定で直線性の良いナノ構造を一辺が53µm(5300 nm)の正方領域全面に形成することに成功した。この構造はレーザ照射部分の95%以上にわたって形成され、改質領域がほとんど生じなかった。これは従来のガウシアンビームを用いた場合に比べ、約6倍の効率で目的の機能表面を得ることができたことを示している。

今後の展開
今回開発した技術を利用すると、固体表面にフェムト秒レーザパルスを照射するだけで数10 nmから数100 nmの均一な溝を掘ることができるため、複雑なプロセスや薬剤が不要な微細加工技術の実現が期待される。また、レーザ光を照射する位置を変えるだけで加工部分を移動できるため、加工材料の大きさに制限がなく、メートルサイズの領域へのナノ加工も容易である。このような大面積領域にナノメートルサイズの微細加工を行える技術は他にはなく、例えば、自動車の摺動部分に形成して摩擦を下げること、細胞が成長・進展する方向を制御すること、色素を使わずに呈色させること、LED照明の指向性を上げること、窓ガラスの反射率を下げて透過率を上げることなどへの応用も期待される。

この詳細を既述した論文は、nanomaterialsにオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.tuat.ac.jp)