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海の扁形動物に触発された微小スイミングロボット

March, 3, 2025, Lausanne--EPFLのエンジニアは、雑然とした水面を機敏にナビゲートする多目的スイミングロボットを開発した。海洋のフラットワーム(扁形動物)に触発されたこの革新的なデバイスは、環境モニタリングと生態学的研究に新たな可能性を提供する。

スイミングロボットは、サンゴ礁や湖岸などの敏感な地域の汚染のマッピング、水生生態系の研究、水質の監視に重要な役割を果たす。とは言え、多くのデバイスはノイズの多いプロペラに依存しているため、野生生物を邪魔したり害を及ぼしたりする可能性がある。これらの環境には、植物、動物、デブリなど、自然の散乱物があり、ロボットスイマーにとって課題ともなっている。

現在、EPFLの工学部にあるSoft Transducers LabとUnsteady flow diagnostics laboratory、およびMax Planck Institute for Intelligent Systemsの研究者は、狭いスペースを移動し、自身よりもはるかに重いペイロードを輸送できるコンパクトで汎用性の高いロボットを開発した。クレジットカードよりも小さく、重さ6グラムの軽快なスイミングロボットは、田んぼのようなスペースが限られている環境や、水上機械での検査に最適である。この研究は、Science Robotics誌に掲載された。

「2020年に、われわれのチームは自律型の昆虫スケールのクロールロボットを実証したが、水生環境向けの接続されていない超薄型ロボットを作ることはまったく新しい課題である。われわれはゼロから始めなければなならなかった。より強力なソフトアクチュエータ、新しい起伏のある移動戦略、コンパクトな高電圧電子機器を開発した」と、EPFLソフトトランスデューサラボの責任者Herbert Sheaはコメントしている。

自律運転のための小型電子機器
従来のプロペラベースのシステムとは異なり、EPFLロボットは、マリンフラットワームに触発された静かに波打つフィンを推進力に使用する。このデザインと軽量性により、ロボットは水面に浮かび、自然環境にシームレスに溶け込むことができる。

「われわれのデザインは、単に自然を再現するものではない。それは自然生物が達成できることを超えている」(Florian Hartmann)。
同氏は、元EPFL研究者で、現在はドイツのシュトゥットガルトにあるマックスプランク知能システム研究所の研究グループリーダー。

ヒレを最大10倍速く振動させることで、ロボットは12㎝/sec (体長2.6倍)という驚異的な速度に達することができる。また、4つの人工筋肉でフィンを駆動することで、これまでにない操縦性を実現している。前進泳ぎや旋回に加え、後方・横泳ぎのコントロールが可能。

ロボットを駆動するために、研究者たちは、電動歯ブラシの4分の1である500mWの低電力で最大500Vをロボットのアクチュエータに供給するコンパクトな電子制御システムを開発した。高電圧を使用しているにもかかわらず、ロボットの低電流とシールド回路により、環境に対して完全に安全。光センサは単純な目として機能し、ロボットが光源を自律的に検出して追跡できるようにする。

研究チームは、このロボットが生態学的研究、汚染追跡、精密農業などの分野に貢献することを想定している。次のステップは、フィールドテストのためのより堅牢なプラットフォームを作成すること。

「われわれは、運転時間を延長し、自律性を高めることを目指している。このプロジェクトから得られた基本的な洞察は、バイオインスパイアードロボット工学の科学を進歩させるだけでなく、自然と調和する実用的でリアルなロボットシステムの基礎を築くと考えられる」とHartmannはコメントしている。