February, 21, 2025, Washington--Heriot-Watt Universityの研究者たちは、最大1km離れた物体やシーンの高解像度3D画像を取得できる単一光子飛行時間型(ToF)LiDARシステムを設計した。
この新しいシステムは、厳しい環境条件において、また葉やカモフラージュネットによって物体が隠されている場合でも詳細なイメージングを可能にすることで、セキュリティ、監視、リモートセンシングの強化に役立つ可能性がある。
「われわれのシステムは、他の研究グループによって報告された同様のLiDARシステムに展開されたディテクタの約2倍の効率でシングルフォトンディテクタを使用し、システムのタイミング分解能が少なくとも10倍優れている」と、研究チームのメンバーである英国のHeriot-Watt UniversityのAongus McCarthyは話している。「これらの改善により、イメージングシステムはターゲットからより多くの散乱光子を収集し、はるかに高い空間分解能を達成することができる。」
Optica Publishing Groupのジャーナル、Opticaでは、英国と米国の研究者の多施設グループが、新しいシステムが325m離れた人からはっきりと認識できる人間の顔を描いた3D画像を構築できることを示している。研究チームの構成は、ヘリオット・ワット大学のGerald Bullerグループ、グラスゴー大学のRobert Hadfieldのグループ、NASAジェット推進研究所のMatthew Shawグループ、MITのKarl Berggrenのグループである。
「このタイプの測定システムは、セキュリティと監視システムの向上につながる可能性がある。たとえば、煙や霧、雑然としたシーンの詳細な深度画像を取得できる。また、様々な環境の物体をリモートで識別し、建物や岩肌の動きを監視して、地盤沈下やその他の潜在的な危険性を評価することも可能になる」と、新しい論文の筆頭著者McCarthyはコメントしている。
光ベースの距離検出
シングルフォトンToF深度イメージングシステムは、レーザパルスがシステムから物体上の点まで移動し、物体までの距離を計算するのにかかる時間を使用する。次に、これらの飛行時間測定をオブジェクト全体のポイントに対して繰り返して、3D情報を取得する。
新しいシステムは、MITとJPLの研究グループが開発した超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)と呼ばれる超高感度検出器を使用している。SNSPDは単一光子(シングルフォトン)を検出できる。つまり、目に安全なレーザを含む非常に低い出力のレーザを使用して、非常に短時間で長距離の測定を行うことができる。ノイズレベルを低減するために、ディテクタはグラスゴー大学のグループによって設計および製造されたコンパクトなクライオクーラーシステム(極低温冷却器システム)で1ケルビン未満に冷却された。
研究チームは、冷却されたSNSPDを、ヘリオットワット大学のMcCarthyによって設計された1550nm波長で動作する新しいカスタムシングルピクセルスキャニングトランシーバと組み合わせた。また、1兆分の1秒(ピコ秒)までの精度で非常に正確な時間間隔を測定するための高度なタイミング機器も追加した。これを大局的に見ると、わずか1,000ピコ秒で、光は約300㎜(約1フィート)進むことができる。この精度により、深さ約1mm離れた面と325m離れた面を区別することが可能になる。
「これらの要素はすべて、スタンドオフ距離、レーザ出力レベル、データ取得時間、深度分解能の間のトレードオフの柔軟性を向上させる。また、SNSPDディテクタは1550nmより長い波長で動作できるため、この設計は中赤外シングルフォトンLiDARシステム開発への扉を開くことになる。これにより、霧や煙、その他の不明瞭な物質によるイメージングがさらに強化される可能性がある」(McCarthy)。
遠方の物体の3D測定
研究チームは、ヘリオット・ワット大学のキャンパスで、45m、325m、または1km離れた物体から測定を行い、LiDARシステムのフィールドテストを行った。
空間分解能と深度解像度を評価するために、チームは様々な柱のサイズと高さでカスタム3Dプリントされたターゲットをスキャンした。このシステムは、昼光で45mと325mの1mmという小さな形状を分解し、以前の約10倍の深さ分解能を達成した。また、1ピクセルあたり1msの撮影時間、目に安全な3.5mWレーザ、最小限のデータ処理を使用して、これらの距離で人間の顔の3D画像をキャプチャした。
「このシステムの優れた深度解像度は、デジタルカメラでは難しいシナリオ、葉や迷彩ネットなど、雑然とした背後の物体のイメージングに特に適していることを意味する。たとえば、カモフラージュネットの数センチ後ろにある物体を区別できるが、解像度の低いシステムでは物体を識別できない」(McCarthy)。
LiDARシステムのフィールドトライアルは1kmの範囲に限定されていたが、研究者は最大10kmの距離でシステムをテストし、煙や霧などの大気中の遮蔽物を通してイメージングを探索する予定。今後の研究では、高度な計算手法を使用してデータ分析を高速化し、より遠いシーンのイメージングを可能にすることにも焦点を当てる予定である。