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混雑したインターネットケーブルで初の量子テレポーテーション実証

January, 6, 2025, Evanston--ノースウェスタン大学(Northwestern University)のエンジニアは、すでにインターネットトラフィックを伝送している光ファイバケーブルを介した量子テレポーテーションの実証に初めて成功した。

学術誌「Optica」に掲載されたこの発見は、量子通信を既存のインターネットケーブルと組み合わせるという新たな可能性をもたらし、高度なセンシング技術や量子コンピューティングアプリケーションに必要なインフラストラクチャを大幅に簡素化する。

「誰もそれが可能だとは思っていなかったので、これは信じられないほどエキサイティングだ」と、研究を主導した同大学のPrem Kumarは語っている。「われわれの研究は、統一された光ファイバインフラストラクチャを共有する次世代の量子ネットワークと古典ネットワークへの道を示している。基本的に、量子通信を次のレベルに押し上げるための扉を開く。」

量子通信の専門家、Kumarは、ノースウェスタン大学McCormick工学部で電気工学およびコンピュータ工学の教授であり、フォトニック通信およびコンピューティングセンタを指揮している。

機能方法
量子テレポーテーションは、光速によってのみ制限されるが、直接送信する必要のない、離れたネットワークユーザ間で情報を共有するための新しい超高速かつ安全な方法を可能にする。このプロセスは、2つの粒子間の距離に関係なく、2つの粒子がリンクされる技術である量子エンタングルメントを利用することによって機能する。粒子が物理的に移動して情報を伝達するのではなく、エンタングルした粒子は、物理的に情報を運ばずに長距離にわたって情報を交換する。

「光通信では、すべての信号が光に変換される。従来の通信の信号は通常、数百万の光の粒子で構成されているが、量子情報では単一の光子(シングルフォトン)が使用する」(Kumar)。

「2つの光子(1つは量子状態を持ち、もう1つは別の光子とエンタングルしている)で破壊的な測定を行うことにより、量子状態は非常に遠く離れた残りの光子に転送される。フォトン自体を長距離送る必要はないが、その状態は最終的に遠方のフォトンにエンコードされる。テレポーテーションは、情報自体がその距離を移動することなく、長距離にわたる情報の交換を可能にする」と、Kumar研究室のPh.D候補者、論文の筆頭著者Jordan Thomasは説明している。

鍵:渋滞を避けるための正しいルートを見つける
Kumarの新しい研究が発表される前は、多くの研究者は、古典的な通信を運ぶケーブルで量子テレポーテーションが可能かどうか確信が持てなかった。エンタングルしたフォトンは、他の何百万もの光粒子の中で溺れてしまう。それは、スピードを出して走る大型トラックの混雑したトンネルを通り抜けようとする薄っぺらな自転車のようなものである。

しかし、Kumarとチームは、繊細な光子が交通渋滞を避ける方法を見つけた。光ファイバケーブル内で光がどのように散乱するかについて詳細な研究を行った後、研究チームは、フォトンを配置するための光の密度が低い波長を発見した。次に、通常のインターネットトラフィックからのノイズを減らすための特別なフィルタを追加した。

「われわれは、光がどのように散乱されるかを慎重に研究し、その散乱メカニズムが最小限に抑えられるジュディシャル(公正)ポイントに光子を配置した。同時に存在する古典的なチャネルからの干渉なしに量子通信を実行できることがわかった」(Kumar)。

新しい方法をテストするために、チームは、両端にフォトンを備えた長さ30kmの光ファイバケーブルを設置した。次に、量子情報と高速インターネットトラフィックを同時に送信した。最後に、テレポーテーションプロトコルを実行しながら、中間点で量子測定を行うことにより、受信側の量子情報の品質を測定した。研究チームは、混雑したインターネットトラフィックが慌ただしく通り過ぎる中でも、量子情報が成功裏に送信されていることを発見した。

「多くのグループがファイバにおける量子通信と古典通信の共存を調査してきたが、この新しいシナリオで量子テレポーテーションを示したのはこの研究が初めてである。直接送信せずに情報を送信できるこの機能により、専用ファイバを使用せずにさらに高度な量子アプリケーションが実行される可能性が開かれる」とThomasはコメントしている。

将来の可能性
次は、Kumarは実験を長距離に拡張する予定である。また、1対ではなく2対のエンタングルメントフォトンを使用して、分散量子アプリケーションにつながるもう1つの重要なマイルストーンであるエンタングルメントスワッピングを実証することを計画している。最後に、Kumarのチームは、実験室のスプールではなく、実際の地下光ケーブルを介して実験を行う可能性を模索している。とは言え、やるべきことがたくさんあるにもかかわらず、Kumarは楽観的である。

「量子テレポーテーションには、地理的に離れたノード間で安全に量子接続を提供する能力がある。しかし、多くの人々は長い間、光の粒子を送るための専門的なインフラを誰も構築しないだろうと思い込んでいた。波長を適切に選べば、新たなインフラを作らなくてすむ。従来の通信と量子通信は共存可能である」とKumarは話している。