December, 20, 2024, 大阪--大阪大学 大学院工学研究科 大学院生の水島健太(博士後期課程)、藤田克昌教授、山中真仁 特任准教授(常勤)、同 先導的学際研究機構 熊本康昭准教授らの研究グループは、同 免疫学フロンティア研究センターのNicholas Smith 准教授、京都府立医科大学の田中秀央特任教授、理化学研究所 環境資源科学研究センターの袖岡幹子 グループディレクターらと共に、生体試料を凍らせて分子を高感度観察できるラマン顕微鏡の開発に成功した。
従来の生体試料のラマン観察における信号対雑音比は、ラマン散乱光の微弱さから、レーザ光の照射による試料のダメージや、観察中の試料の動きにより制限されてきた。また、生体試料の動きを固定するために一般的に用いられる方法の多くは、試料の化学的な状態を変化させてしまうという課題もあった。
今回、研究グループは、生体試料を急速に凍結し、試料を低温状態のままラマン観察することによりラマン観察の信号対雑音比を向上する、クライオ-ラマン顕微鏡を開発した。この顕微鏡を用いると、試料中の分子の分布や化学状態を変性させることなく固定でき、また試料を低温下に置いて物理的に安定化させることで、レーザ光による試料のダメージを抑制し、高信号対雑音比、高分解能、広視野でのラマン観察を可能にする。
研究では、開発した技術を用いて、凍結固定された細胞を長時間観察することに成功し、観察信号の増大、信号対雑音比(SNR)の向上、実効的な空間分解能とスペクトル分解能の向上を確認した。また、従来のラマン観察法では観察時間が1時間程度に限られていたが、約10時間以上の長時間観察も行える安定な顕微鏡システムが構築できたことで、高い信号対雑音比と広い視野での細胞観察が可能となった。
研究成果は、米国科学誌「Science Advances」に、12月12日(木)(日本時間)に公開された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)