December, 17, 2024, つくば--NIMSとファインセラミックスセンタ(JFCC)の研究チームは、スピン波(磁気の波)とイオン制御技術を組み合わせた次世代のAIデバイスを開発した。
1.NIMSとファインセラミックスセンター(JFCC)の研究チームは、スピン波(磁気の波)とイオン制御技術を組み合わせた次世代のAIデバイスを開発した。この新技術により、従来の技術を大きく超える高度な情報処理が可能となり、AI分野における革新が期待される。
2.AIデバイスの進化が進む中、低消費電力で高性能なデバイスへのニーズはますます高まっている。今回開発されたデバイスでは、磁性体「イットリウム鉄ガーネット(YIG)」にアンテナを取り付け、スピン波を発生させる。電圧をかけて注入されるイオンの量に応じてスピン波の干渉パターンを変化させ、この干渉を計算処理に活用する。この技術により、従来のデバイスを大幅に上回る計算性能が実現した。
3.特に、このデバイスを用いた時系列データの予測では、従来のデバイスに比べて予測精度が大幅に向上した。Mackey-Glass方程式を用いたテストでは、予測誤差を1桁以上低減することに成功している。Mackey-Glass方程式は、生体内の複雑な変動をモデル化したもので、時系列データ予測の精度を測定するための標準的なテストである。
4.この技術は、単結晶だけでなく磁性体の薄膜にも適用可能であり、小型化しても高性能を維持できるため、様々な産業分野での応用が期待される。特に、各種センサと組み合わせると、低消費電力かつ高精度なAIデバイスとして広く活用できる可能性がある。
5.研究は、NIMS ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA) ニューロモルフィックデバイスグループの土屋敬志グループリーダー、並木航NIMSポスドク研究員(研究当時。現同センター研究員)、西岡大貴研修生(研究当時。現NIMS若手国際研究センター ICYSリサーチフェロー)、 MANA イオニクスデバイスグループの寺部 一弥グループリーダーと、 JFCC の野村優貴主任研究員、山本和生 グループリーダーによる研究チームによって、防衛装備庁安全保障技術研究推進制度による支援を受けて行われた。
6.研究成果は、2024年11月17日にAdvanced Science誌のオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.nims.go.jp)