December, 12, 2024, 東京--東京科学大学(Science Tokyo)などの研究チームは、マルチフェロイック物質であるBiFeO3の単結晶薄膜を、時間幅100 fs(10兆分の1秒)の光パルスで励起し、誘電分極の大きさがパルス幅の時間以内で室温においても操作できることを確認した。
また、電子線パルスを用いた最新の構造測定装置の観測結果と理論的解析から、光で注入された励起電子が周囲に新しい格子の振動(フォノン:結晶中の波)を生み出し、分極を変化させていることを解明した。
各種情報処理の高度化に向け、誘電分極や磁性を使った電子記録デバイスには、高速化が要求されている。このためには100 fs以内で結晶構造が変化する物質の探索が課題だった。問題解決の一案として、電子とフォノンが強く結合した(ドレスド)状態による分極やスピン状態(磁性の起源)を超高速制御する理論的アイデアが小野助教によって提案された。
この研究では光励起によってドレスド状態が室温のBiFeO3結晶薄膜内に実際に出現し、超高速の分極・磁性の制御が可能となることを示した。強誘電・磁気メモリーデバイスの100 fs秒以下での超高速制御、さらには光情報と電子情報とを超高速に直接変換することが室温で可能となると期待される。
研究成果は、12月4日付の「Communications Materials 」に掲載された。
研究チーム
東京科学大学(Science Tokyo)理学院 化学系の田久保耕特任助教(現早稲田大学客員研究員)と腰原伸也教授、総合研究院の重松圭助教、東正樹教授、筑波大学数理物質系の羽田真毅准教授、東北大学大学院理学研究科の小野淳助教、名古屋大学未来材料・システム研究所の桒原真人教授、名古屋工業大学生命・応用化学類の浅香透准教授ら
(詳細は、https://www.isct.ac.jp/ja/news/fxaw7p5vbk2l)