December, 11, 2024, 名古屋/大阪--名古屋大学大学院工学研究科の松山智至教授(兼:大阪大学大学院工学研究科招へい教授)、栗本晋之介博士前期課程学生(研究当時)、井上陽登助教、理化学研究所放射光科学研究センターの矢橋牧名グループディレクター、香村芳樹 チームリーダーらの研究グループは、試料を面内回転させながら撮影した顕微鏡像からボケを分離して試料情報(振幅と位相)を決定できる手法を開発した。
数式ベースのアルゴリズムでは再構成が困難だったが、AI技術を駆使した手法(物理拘束条件を持つニューラルネットワーク)を新たに考案することで、この問題を解決した。この手法を用いることで、レンズの作製誤差やアライメント誤差に起因するボケを容易に取り除くことができ、高精細な顕微鏡像の取得が可能となる。また、ボケの原因となる波面収差を定量的に決定できるため、結像光学系の診断にも応用できる。この手法は複雑な光学系を構築できないX線領域でも容易に実施可能。X線領域ではレンズやミラーの作製が難しくボケの発生が避けられないため、ボケを除去した高精細なX線顕微鏡画像が得られるこの手法は非常に有効である。高分解能かつ試料内部を非破壊で観察できるX線顕微鏡は、様々な領域(半導体デバイス検査や電池内部の観察など)で注目されており、この手法によってさらなる空間分解能の向上が可能となった。
研究成果は、2024年11月29日19時(日本時間)に英国科学誌『Scientific Reports』に掲載された。
研究成果のポイント
・試料を面内回転させながら撮影した顕微鏡像だけを用いて、試料とボケの情報(振幅と位相)を分離して決定できる手法を開発。
・AI技術を駆使した再構成法(物理拘束条件を持つニューラルネットワーク)を開発することで、実験誤差に対して安定な再構成に成功。
・この手法を用いることでボケを除去した高精細なX線顕微鏡像の再構成に成功。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)