November, 28, 2024, 東京--株式会社東芝(以下、東芝)研究開発センタ ナノ・材料フロンティア研究所 フロンティアリサーチラボラトリの久保賢太郎 主事、何英豪 スペシャリスト、後藤隼人 シニアフェロー(理化学研究所(理研) 量子コンピュータ研究センター 量子コンピュータアーキテクチャ研究チーム チームリーダー)、理研 量子コンピュータ研究センター 超伝導量子エレクトロニクス研究チームのRui Li 特別研究員、Zhiguang Yan 特別研究員、中村泰信 チームリーダー(理研 量子コンピュータ研究センタ センタ長)らの共同研究グループは、超伝導量子コンピュータに利用される東芝提案の素子「ダブルトランズモンカプラ」を実験的に実現することに成功し、量子計算で重要な役割を果たす2量子ビットゲートの忠実度において世界トップレベルの99.90%を達成した。
「忠実度」とは、理想的な操作にどのくらい近いかを0から100%の間の数で定量的に表す量子ゲートの標準的な性能指標で、100%に近いほど量子ゲートが正確であることを示すものである。
「ダブルトランズモンカプラ」は、東芝が2022年9月の論文で提案した、超伝導量子コンピュータの性能向上の鍵を握る可変結合器の一種。従来の可変結合器に比べ、不要な残留結合を小さく抑えられること、また、高速かつ高精度な2量子ビットゲートを実現できることを理論上で確認していた。
今回、東芝と理研はこの特性を実験で実証することに成功した。
2量子ビットゲートの性能向上には、量子コンピュータで重要となる量子の重ね合わせ状態を保てる時間であるコヒーレンス時間を長くすること、高速にゲートを実行できること、さらに残留結合によるエラーを低減するために残留結合強度を抑制することが重要である。
今回、トランズモンと呼ばれる超伝導量子ビットとして世界トップクラスのコヒーレンス時間の長さと48 nsという短いゲート時間を実現するとともに、残留結合強度の大きさを6kHzにまで抑えることで、忠実度99.90%を達成した。
「ダブルトランズモンカプラ」を用いる量子コンピュータは、量子ビットとして安定性が高い上に構造がシンプルで比較的容易に作製可能な「周波数固定トランズモン量子ビット」を量子ビットとして利用することができ、量子コンピュータの実用化に欠かせない大規模化が見込める。
この技術は、近年発展が著しい量子コンピュータのさらなる高性能化に寄与するものであり、カーボンニュートラルや新薬開発といった社会課題の解決への貢献が期待できる。
この技術の成果は、2024年11月21日付(米国東海岸時間)の米国物理学会のトップジャーナル「Physical Review X」に掲載された。
(詳細は、https://www.global.toshiba)