November, 21, 2024, 東京--東京農工大学 大学院工学研究院先端物理工学部門の生嶋健司教授の研究グループは、情報通信機構、アデレード大学、東京大学と協働し、磁場下のグラフェンにおいて電気駆動により波長可変な赤外発光を世界で初めて観測することに成功した。
この成果により、今後、新たな赤外光源の創出が期待される。
研究成果
研究グループでは、磁場下でグラフェンからの微弱な中赤外光を検出するための極低温光学系の開発に取り組んだ。今回、研究グループは量子井戸をベースとした高感度な検出器(電荷敏感型赤外フォトトランジスタ)を用いて、磁場下(5テスラ)における電気駆動のグラフェンから中赤外発光を観測した。発光する閾値電圧の値から電流端子近傍の二つの対角線上コーナーから発光していることが示唆されている。ランダウ準位発光では、ランダウ準位のエネルギー差に相当する波長の光が放出される。グラフェンでは、そのエネルギー差は磁場の平方根に比例する。今回、磁場を掃引した分光測定によりグラフェンからの発光が磁場の平方根に比例して波長可変であることを実証した。
今後の展開
グラフェンにおけるランダウ準位発光が観測され、その発光メカニズムも明らかになった。非等間隔なランダウ準位の特徴を活かし、磁場により波長可変な赤外レーザへの発展が期待される。
研究成果は、APL Photonics(11月1日付)に掲載された。
論文タイトル:Landau-level terahertz emission from electrically biased graphene
URL:https://doi.org/10.1063/5.0233487