November, 13, 2024, 東京--東京大学大学院工学系研究科の川﨑彬斗大学院生及びアサバナントワリット助教、古澤明教授らの研究チーム、マサチューセッツ大学のラジュヴィーネハラ助教授、日本電信電話株式会社(NTT)、情報通信研究機構(NICT)、国立研究開発法人理化学研究所は、シュレディンガーの猫状態と呼ばれる強い量子性(非古典性)を有する光量子状態の生成レートを、従来手法より1000倍程度高速化することに成功した。
誤り耐性型光量子コンピュータを実現するためには、誤りを検知し訂正するための論理量子ビットが必要不可欠。直近では、光パルスを用いた論理量子ビット生成の実証実験に成功し、誤り耐性型光量子コンピュータの実現への道筋が示された。しかしながら、実証実験レベルから実用レベルへ移行するためには、その論理量子ビットの生成確率を上げる必要がある。例えば、現在広く用いられている古典コンピュータのクロックレートはギガヘルツ(GHz、1秒に10億回)の水準に達する一方で、高い非古典性を有する光量子状態の生成手法は基本的に確率的であり、その生成レートはキロヘルツ(kHz、1秒に1000回)程度に留まっていた。
研究は従来の状態生成・測定のための量子光源・ホモダイン測定器(HD)の代わりに、NTTが主体となり開発した光パラメトリック増幅器(OPA)及び東京大学とNICTが共同開発した超伝導光子検出器を用いることで、光源及び測定の周波数帯域を大幅に向上させた。これによりシュレディンガーの猫状態をメガヘルツ(MHz、1秒に100万回)の生成レートで実現した。この方法をさらに発展させればギガヘルツの生成レートの実現も見込まれ、実用レベルの生成レートを有した論理量子ビット生成の実現が期待される。
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)