January, 30, 2015, West Lafayette--パデュー大学(Purdue University)の研究チームは、「ハイパーボリックメタマテリアル」を使ってシングルフォトンを放出する新しい方法を実証した。量子コンピュータや通信技術の開発を目標とするデバイス実現に一歩近づいた。
光メタマテリアルは、表面プラズモンと呼ばれる電子群を利用して光を操作し制御する。パデュー大学の研究チームは以前に、金属チタンナイトライドと誘電体、もしくは絶縁体で構成される層から「超格子」を作製した。開発中のプラズモンコンポーネントの一部は金や銀などの貴金属に依存するが、それとは違い、新しいメタマテリアルはIC製造に使われるCMOSプロセスに適合している。
このメタマテリアルは、ハイパーボリックと言われ、光出力増加につながる固有の特徴を備えている。新しい研究成果では、「窒素欠陥中心」を持つダイヤモンドを新しいメタマテリアルに付けることでシングルフォトンの生成がいかに強化されるかを実証した。シングルフォトンは量子情報処理のワークホースであり、これによって優れたコンピュータ技術、暗号技術、通信技術が可能になる。
パデュー大学電気・コンピュータ工学准教授、Alexander Kildishev氏によると、シングルフォトンエミッタは高効率の室温CMOS適合シングルフォトン光源の作製に使える。
窒素欠陥(NV)中心は、窒素原子を炭素原子で置き換えて格子に欠陥を作ることでダイヤモンド格子に原子スケールで形成される。「ハイパーボリックメタマテリアル表面にNV中心を含むナノダイヤモンド置くことは、フォトンの放出を強めるだけでなく、発光のパタンも変える。これは量子デバイス開発にとって重要な特徴である」と論文の筆頭著者、院生Mikhail Y. Shalaginov氏は説明している。
意図的に作製したシステムは室温で動作するシングルフォトンの安定光源であるので、商用アプリケーションで実際に使える可能性がある。レーザ光を当てるとシステムは「基底状態」から励起状態に移行し自然にフォトンを放出する。
研究成果は、同システムがシングルフォトンをより速く、大量に、一方向に生成できることを示している。
今後は、ハイパーボリックメタマテリアルとナノアンテナおよび光導波路を統合したデバイスでシステムを改善し、効率を高め、一層コンパクトにしていく。また、現在進行中の研究は、窒素欠陥でシステムの「スピン特性」を改善すること、アップ状態とダウン状態との間の光学的コントラストの研究を目指している。