Science/Research 詳細

マルチスケール・マルチディメンジョン・マルチモーダルイメージング

October, 22, 2024, 京都--京都大学材料工学専攻の平山恭介助教(現:香川大学創造工学部准教授)は九州大学大学院工学研究院の戸田裕之主幹教授と藤原比呂助教、SPring-8の竹内晃久、上椙真之両主幹研究員らと共同で、特殊な方式のX線回折技術を開発してこれを先進X線CT法に融合した。
これは、3つの計測・イメージング法を並列させて切替えながら、ただ1個の試験体を集中的に評価・分析・解析する、世界でも初めての本格的なマルチスケール・マルチディメンジョン・マルチモーダル(以下、3M)材料評価技術である。

研究グループは、次世代自動車用鋼板であるTRIP鋼にこの技術を試用した。TRIP鋼に外力を加えた時の材料組織変化や損傷挙動をこれまでの材料解析より飛躍的に高い精度と確度で評価した。現象を規定する材料組織学的な因子を特定すると共に、ナノ・ミクロ材料組織を積極的に制御してTRIP鋼の特性を制御できる材料設計指針を解明することができた。

発表の要点
1.特性や信頼性に優れた金属等の先端材料は、我が国のものづくりを支え、産業的な競争力の源泉。その開発のため、従来の分析・計測法から飛躍した新しい材料解析法が望まれる。
2.最近、SPring-8では、マルチスケール(ナノ~マクロ)、マルチディメンジョン(3D/4D)という特徴を持つ先進イメージング技術が開発された。この研究では、これにさらに結晶組織を解析するX線回折法を融合し、マルチモーダル材料解析技術として完成させた。
3.従来、構造材料の分析には多数の機器を必要とし、手間がかかるわりに断片的で不確かな情報しか得られず、非効率だった。開発法では、1本の試験体を評価するだけでナノ・ミクロ構造とマクロ特性とを直接結ぶ確度の高い情報が得られる。次世代自動車鋼板に開発法を試用し、鉄鋼の精緻で効率的な制御指針が得られ、開発法の優位性・実用性が実証された。

研究成果は国際学術誌Acta Materialiaに2024年10月6日(日)に掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)