Science/Research 詳細

有機フォトン・アップコンバージョン粒子による神経細胞の光操作に成功

October, 17, 2024, 九州--九州大学大学院工学研究院の宇治雅記大学院生、楊井伸浩准教授(現 東京大学大学院理学系研究科 教授)らの研究グループは、東京医科歯科大学の味岡逸樹教授、神奈川県立産業技術総合研究所の原央子博士、九州大学大学院工学研究院の近藤純平大学院生(当時)、君塚信夫教授らと共同して、生体透過性が高い赤色・近赤外光を生体内で青色光に変換可能なフォトン・アップコンバージョン(UC)ナノ粒子を開発し、生体内で神経細胞を光操作することに成功した。

オプトジェネティクス(光遺伝学)は、光で活性化するタンパク質を用いて神経細胞を制御する技術であり、神経科学の発展に大きく貢献している。光応答性タンパク質を活性化するためには、一般的に波長500 nm以下の青色光が用いられる。しかし、青色光は皮膚や生体内物質によって強く散乱・吸収されるため、青色光を生体内に届けるためには光ファイバを挿入する必要があり、生体組織の損傷や機能障害を起こす可能性がある。

研究では、新規有機増感剤分子の開発により、赤色・近赤外光から青色光への変換効率が2倍以上更新された。また、従来のUC材料ではオスミウムといった生体毒性の懸念がある重金属が含まれていたが、今回の研究で開発されたUC材料は有機分子のみで構成されており重金属を含まない。マウスの皮下に有機UCナノ粒子を投与し、体外から赤色光を照射することで、生体内で青色光応答性のオプトジェネティクス操作に成功した。今回の成果により、生体内の神経活動を低侵襲的に光操作できるようになり、オプトジェネティクスによる生命・医療分野への展開が期待される。

研究成果は、2024年9月23日(現地時間) にWileyの国際学術誌「Advanced Materials」にオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.kyushu-u.ac.jp)