September, 25, 2024, 仙台--他の国際研究グループは、代表的な量子物質である酸化バナジウム(III)のナノ結晶において、光照射で結晶方位が変化する逆強弾性転移が、従来の熱膨張を介する過程よりも100倍高速に起こることを発見した。
また、高速な構造変化の機構が、量子物質が示す光誘起絶縁体―金属転移によるひずみ波の伝搬であることを解明した。
光による固体の結晶構造(対称性)の変化は、非接触の超音波トランスデューサなど光ー力学エネルギーの高速変換の原理として産業応用されることが期待されている。しかし現在の技術は熱膨張を介しているため、ナノ(10億分の1)秒以下の高速、言い換えるとギガ(10億)ヘルツ以上の高い周波数での応答は困難だった。
東北大学大学院理学研究科の岩井伸一郎教授と天野辰哉助教、名古屋大学大学院工学研究科の岸田英夫教授、仏レンヌ第一大学物理学科/仏国立科学研究センタ(CNRS)のDr. Maciej Lorenc とHerve Cailleau教授、仏ナント大学Jean Rouxel材料研究所/CNRSのDr. Etienne Janod らの国際研究グループは、モット絶縁体と呼ばれる量子物質のナノ結晶を用いることにより、巨視的な結晶対称性の変化(逆強弾性転移)が、3 ピコ(1兆分の1)秒という、熱膨張を介する場合の100分の1の短時間で完了することを発見した。こうした高効率、超高速な構造変化は、新規な光音響デバイスの原理として応用が期待できる。
この成果は科学誌Nature Physicsに2024年9月17日にオンライン掲載された。