September, 19, 2024, 大阪--大阪大学レーザー科学研究所の千徳靖彦教授と米国ネバダ大学リノ校の澤田寛准教授を中心とする高輝度光科学研究センター(日本)、理化学研究所放射光科学研究センター(日本)、SLAC国立加速器研究所(米国)、アルバータ大学(カナダ)、ローレンス・リバモア国立研究所(米国)、ロチェスター大学(米国)の国際共同研究チームは、X線自由電子レーザ施設「SACLA」による高速イメージングにより、高強度レーザにより加熱された固体の銅薄膜内部のプラズマへの遷移過程を捉えることに成功した。
高強度レーザパルスの加熱時間は100兆分の1秒程度であり、加熱で生じる高速電子(ほぼ光速で移動)のダイナミクスが、プラズマ状態の発展を支配するため、その瞬間を捉える手法は存在しなかった。
研究では、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いた高空間・時間分解計測手法を開発し、加熱された銅薄膜内部のプラズマ状態への発展の様子を世界で初めて捉えることに成功した。
高速電子による高密度プラズマの加熱物理は、レーザ科学研究所が進めるレーザフュージョンエネルギー実現に不可欠な高効率核融合方式(高速点火方式)に関する重要な知見。また、実験では銅薄膜が瞬時にプラズマへ変化する過程で、固体―プラズマ遷移状態(Warm Dense Matter)と呼ばれる、プラズマと金属の中間の状態に変化することが明らかになった。この状態の物性情報は、惑星内部やレーザ核融合の燃料球の状態の解明に必要なものである。現状、高強度短パルスレーザとX線自由電子レーザを同時に利用できる実験施設は、日本のSACLAの他に米国SLAC国立加速器研究所とドイツのEuropean XFELのみであり、この研究はX線自由電子レーザを、高強度レーザによる加熱物理の解明に応用した初めての結果であり、さらなる高エネルギー密度科学、レーザフュージョンエネルギーを目指した研究の応用が期待される。
研究成果は、シュプリンガー・ネイチャー社の科学誌「Nature Communications」に、9月5日(木)18時(日本時間)に公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)