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アリゾナ大学、動きのある電子を見ることができる顕微鏡を開発

August, 29, 2024, Tucson--アリゾナ大学の研究チームは、動く電子のフリーズフレームを可能にする世界最速の電子顕微鏡を開発した。

チームは、この研究が物理学、化学、生物工学、材料科学などの分野で画期的な進歩につながると考えている。

「最新バージョンのスマートフォンを入手すると、より優れたカメラが付属している。この透過型電子顕微鏡は、最新バージョンのスマートフォンの非常に強力なカメラのようなものだ。これにより、電子など、以前は見ることができなかったものを撮影することができる。この顕微鏡により、科学界が電子の振る舞いや電子の動きの背後にある量子物理学を理解できることを願っている」と、物理学/光学科学准教授であるMohammed Hassanはコメントしている。

Hassanは、物理学と光学科学のアリゾナ大学の研究者チームを率いて、Science Advances誌に研究論文「Attosecond electron microscopy and diffraction」を発表した。同氏は、物理学の助教授であるNikolay Golubev、Dandan Huiと協働した。Dandan Huiは、光学/物理学の共同筆頭著者および元研究員で、現在は中国科学院の西安光学精密機械研究所で勤務している。Husain Alqattan、共同筆頭著者、U of A卒業生、クウェート大学の物理学助教授。

透過型電子顕微鏡は、科学者や研究者が、従来の光学顕微鏡では検出できないほど微小な詳細を見るために、物体を実際のサイズの数百万倍まで拡大するために使用するツール。可視光を使用する代わりに、透過型電子顕微鏡は、研究対象のサンプルに電子ビームを向ける。電子とサンプルの間の相互作用は、レンズによってキャプチャされ、サンプルの詳細な画像を生成するためにカメラセンサによって検出される。

これらの原理を利用した超高速電子顕微鏡は、2000年代に初めて開発され、レーザを使用して電子のパルスビームを生成する。この手法により、顕微鏡の時間分解能、つまりサンプルの経時的な変化を測定および観察する能力が大幅に向上する。これらの超高速顕微鏡では、カメラのシャッター速度に依存して画質を決定するのではなく、透過型電子顕微鏡の解像度は電子パルスの持続時間によって決定される。

パルスが速いほど、画像は良くなる。

従来、超高速電子顕微鏡は、数アト秒の速度で電子パルス列を放出することで動作していた。アト秒は 1京 分の1 秒。この速度のパルスは、映画のフレームのように一連の画像を作成するが、科学者たちは、これらのフレーム間で起こる電子の反応や変化を今でも見逃していた。電子が所定の位置に凍結しているのを見るために、アリゾナ大学の研究者は、電子が移動するのと同じ速さの単一のアト秒電子パルスを初めて生成し、それによって顕微鏡の時間分解能を向上させた。

Hassanとチームは、Pierre Agostini, Ferenc Krausz、それにアト秒で測定できるほど短い極端紫外線パルスを初めて生成し、2023年にノーベル物理学賞を受賞したAnne L’Huilliereのノーベル賞受賞業績に基づいて研究を行った。

その研究を足がかりとして、アリゾナ大学のチームは、強力なレーザを分割して、非常に高速な電子パルスと2つの超短光パルスの2つの部分に変換する顕微鏡を開発した。ポンプパルスとして知られる最初の光パルスは、サンプルにエネルギーを供給し、電子を移動させたり、他の急速な変化を起こさせたりする。2番目の光パルスは、光ゲーティングパルスとも呼ばれ、ゲートされた単一のアト秒電子パルスが生成される短い時間ウィンドウを作成することにより、ゲートのように機能する。したがって、ゲーティングパルスの速度が画像の解像度を決定する。2つのパルスを慎重に同期させることで、研究者は電子パルスがサンプルをプローブするタイミングを制御し、原子レベルでの超高速プロセスを観察する。

「電子顕微鏡内部の時間分解能の向上は長い間待ち望まれており、多くの研究グループの焦点となっている。と言うのは、われわれは皆、電子の動きを見たいと思っていたからである」(Hassan)。「これらの動きはアト秒で起こる。しかし、今回初めて、電子透過型顕微鏡でアト秒の時間分解能を達成できるようになり、それを「アトマイクロスコープ」と名付けた。初めて、電子の断片が動いているのを見ることができるのである」。