August, 20, 2024, Aachen--AMO GmbH、アーヘン工科大学(RWTH Aachen University)、KTH王立工科大学、Senseair AB、およびドイツ連邦軍大学の研究者は、グラフェンを活物質として使用した導波路一体型白熱熱中赤外線エミッタの開発に成功した。
この革新的なアプローチにより、ガスセンサシステムの効率、コンパクトさ、信頼性が大幅に向上し、様々な業界での広範なアプリケーションへの道が開かれる。
ガス漏れ検出、工業プロセス制御、環境モニタリング、医療診断など、いずれもしっかりとしたリアルタイムの大気質モニタリングソリューションを必要とするアプリケーションであり、分散型でネットワーク化されたコンパクトなガスセンサの需要が高まっている。触媒ビーズや半導体金属酸化物センサなどの従来のガスセンシング方法は、化学反応に依存するため、性能の低下、頻繁なキャリブレーションの必要性、センサ寿命の制限に悩まされていた。
吸収分光法は、温室効果ガスを含む中赤外(mid-IR)領域のいくつかのガスの基本的な吸収線を利用することにより、有望な代替手段となる。この方法は、センサを化学的に変化させることなく、高い特異性、最小限のドリフト、および長期安定性を提供する。4.2µmの二酸化炭素(CO2)などの特徴的な吸収波長を通じてガスを「フィンガープリント」する能力は、正確なガス検出に理想的な技術である。
フォトニック集積回路(PICs)は、分光装置をチップサイズに小型化する上で大きな進歩を遂げ、非常にコンパクトでコスト効率の高い光ガスセンサシステムを実現している。しかし、光源と検出器をウエフフレベルに直接統合することは依然として課題である。このハードルを乗り越えることができれば、センサのサイズとコストをさらに削減し、機械的安定性を高め、パフォーマンスを向上させることができる。
グラフェンは、熱放出に必要な温度に到達する能力と良好な放射率により、中赤外エミッタの優れた候補として浮上して来た。その単層構造により、導波モードを大幅に歪めることなく理想的な近接場結合が可能となり、シリコンフォトニック導波路との統合に最適である。
この研究では、Nour Negmのチームは、シリコンフォトニック導波路の上にグラフェンエミッタを直接統合し、導波路モードへの直接結合を可能にした。このセットアップでは、3〜5μmのスペクトル範囲の放出の検出に成功し、グラフェンベースのエミッタが大気質モニタリングに利用できる可能性を実証している。
この結果は、効率的でコンパクト、かつ信頼性の高いガスセンサシステムの開発において大きな前進となる。この研究は、都市部の様々なアプリケーションでのリアルタイムの大気質モニタリングのための強化された機能の開発を目指すEUプロジェクトUlissesおよびAeolus内で行われた。