新しい超高純度シリコンチップ、強力な量子コンピュータへの道を開く

August, 14, 2024, Melboune--メルボルン大学とマンチェスター大学の研究者は、強力な量子コンピュータを大きく近づける、高度に精製されたシリコンを製造するための画期的な技術を発明した。

研究チームによると、超高純度シリコンを設計する新しい技術により、量子コンピュータを大規模かつ高精度で作るのに最適な材料になる。

プロジェクトの共同スーパーバイザ、メルボルン大学のDavid Jamieson教授は、Nature誌のCommunications Materialsに掲載されたこのイノベーションは、純粋で安定したシリコンの結晶に埋め込まれたリン原子の量子ビットを使用しており、悪名高い脆弱な量子コヒレンスの期間を延長することで、量子コンピューティングに対する重大な障壁を克服できる、と語っている。

「脆弱な量子コヒレンスは、コンピューティングエラーが急速に蓄積されることを意味する。われわの新しい技術によって提供される堅牢なコヒレンスにより、量子コンピュータは、従来のコンピュータや「古典的な」コンピュータ、さらにはスーパーコンピュータでさえも何世紀もかかるいくつかの問題を数時間または数分で解決できる」とJamieson教授はコメントしている。

量子コンピュータの構成要素であるqubitsは、温度変動など、環境の小さな変化の影響を受けやすい。絶対零度(-273℃)に近い静かな冷凍庫で操作しても、現在の量子コンピュータはエラーのないコヒレンスを維持できるのはほんの一瞬である。

University of Manchesterの共同指導教官、Richard Curry教授によると、超高純度シリコンにより、スケーラブルな量子コンピュータへの道を開くために必要な重要コンポーネント、高性能量子ビットデバイスの構築が可能になった。

「われわれができたのは、シリコンベースの量子コンピュータを構築するために必要な重要な“ブリック”を効果的に作成できたこと。これは、人類に変革をもたらす可能性を秘めた技術を作るための重要なステップである」(Curry教授)。

共同マンチェスター大学とメルボルン大学のクックソン奨学生、筆頭著者Ravi Acharyaによると、シリコンチップ量子コンピューティングの大きな利点は、今日のコンピュータで使用されているチップと同じ基本的な技術を使用していることである。

「現在、日常のコンピュータに搭載されている電子チップは、数十億個のトランジスタで構成されている。これらは、シリコンベースの量子デバイス用のqubitsを作成するためにも使用できる。高品質のシリコンqubitsを作る能力は、これまで、使用されるシリコン出発物質の純度によって部分的に制限されてきた。われわれがここで示す画期的な純度は、この問題を解決するものである」。

Jamieson教授は、新しい高度に精製されたシリコンコンピュータチップは、qubitsを収容して保護するため、量子コヒレンスをはるかに長く維持でき、エラー訂正の必要性を大幅に減らして複雑な計算を可能にする、と語っている。

「われわれの技術は、人工知能、安全なデータと通信、ワクチンと医薬品の設計、エネルギー使用、物流、製造など、社会全体に一歩の変化を約束する信頼性の高い量子コンピュータへの道を開く」(Jamieson教授)。

ビーチの砂から作られたシリコンは、豊富で用途の広い半導体であるため、今日の情報技術産業の主要な材料である。他の化学元素が添加されるかに応じて、電流の導体または絶縁体として機能することができる。

「他のものは代替手段を実験しているが、われわれは、シリコンは、信頼性の高い量子計算に必要な永続的なコヒレンスを可能にする量子コンピュータチップの最有力候補であると考えている」(Jamieson教授)。

「問題は、天然に存在するシリコンが主に望ましい同位体シリコン28であるが、一方で、約4.5%のシリコン29も存在することである。Silicon-29は、各原子の原子核に余分な中性子を持ち、それが小さな不正磁石のように機能し、量子コヒレンスを破壊し、計算エラーを引き起こす」(Jamieson教授)。

研究チームは、純粋なシリコン28の集束高速ビームをシリコンチップに向けることで、シリコン28がチップ内のシリコン29原子を徐々に置き換え、シリコン29を4.5%から100万分の2(0.0002%)に減少させた。

「素晴らしいニュースは、シリコンをこのレベルまで精製できることだ。われわれは今、われわれが設計した特定の構成に調整された、どの半導体製造研究所でも見られる標準的な機械、イオン注入装置を使用できるようになった」とJamieson教授はコメントしている。