August, 9, 2024, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、アニーリング型の量子コンピュータ(量子アニーリングマシン)と古典コンピュータとを併用する新たな演算手法(量子とデジタルをハイブリッドしたアルゴリズム)を開発し、次世代移動通信システムにおける活用が求められる非直交多元接続技術の信号分離処理に適用した無線通信実験に成功した。
現在の第5世代移動通信システム(5G)では、同一周波数・同一時間を使用して、基地局アンテナ1本当たり1台の端末局と通信を行っている。一方、次世代移動通信システムでは、5Gと比較して同時接続数を10倍以上とすることが期待されている。このアルゴリズムを用いることで、基地局アンテナ1本当たり少なくとも7台まで端末局との同時接続が行えることをシミュレーションで確認するとともに、4台との同時接続を屋外実験で実証した。量子アニーリングマシンを利用したアルゴリズムを用いて、実フィールドにおける多数同時接続技術(非直交多元接続技術)のオンラインでの実証を行ったのは世界初である。
非直交多元接続技術では、数万通り以上の大規模な組合せ最適化問題を解く必要があるが、このアルゴリズムを適用することで、従来手法と比較して信号分離処理に要する計算時間を約10分の1に短縮できることを示した。このアルゴリズムが実用化されれば、次世代移動通信システムにおいて、これまで膨大な計算量が障壁となっていた組合せ最適化問題(大規模なビームフォーミング等)を、短時間で行えることが期待される。
(詳細は、https://www.nict.go.jp)