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EPFL、量子冷却のための2次元デバイス

July, 19, 2024, Lausanne--EPFLのエンジニアは、宇宙空間よりも低い温度で熱を効率よく電圧に変換できるデバイスを開発した。このイノベーションは、最適に機能するために極低温を必要とする量子コンピューティング技術の進歩に対する大きな障害を克服するのに役立つ可能性がある。

量子計算を実行するには、量子ビット(qubits)をミリケルビン範囲(-273℃付近)の温度まで冷却して、原子の運動を遅くし、ノイズを最小限に抑える必要がある。しかし、これらの量子回路を管理するために使用されるエレクトロニクスは熱を発生し、このような低温では除去が困難。したがって、現在のほとんどの技術では、量子回路を電子コンポーネントから分離する必要があり、ノイズと非効率性が発生し、実験室を超えた大規模量子システムの実現が妨げられている。

工学部のAndras Kisが率いるEPFLのナノスケール電子構造研究所(LANES)の研究チームは、極低温で動作するだけでなく、室温で現在の技術に匹敵する効率で動作するデバイスを製造した。

「現在の技術の変換効率に匹敵する、量子システムに必要な低磁場と超低温で動作するデバイスを開発したのは、われわれが初めてである。この研究はまさに一歩先を行くものだ」と、LANES PhD学生Gabriele Pasqualeは話している。

この革新的なデバイスは、グラフェンの優れた導電性とセレン化インジウムの半導体特性を組み合わせたものである。わずか数原子の厚さで、2次元の物体として振る舞い、この材料と構造の斬新な組み合わせは、これまでにない性能を生み出す。
研究成果は、Nature Nanotechnology誌に掲載された。

Nernst効果の活用
このデバイスは、温度が変化する物体に垂直に磁場を印加すると電圧が発生する複雑な熱電現象であるNernst効果を利用している。ラボの装置は2次元的な性質を持っているため、このメカニズムの効率を電気的に制御することができる。

2D構造は、EPFLマイクロナノテクノロジーセンタとLANESラボで作製された。実験では、レーザを熱源とし、特殊な希釈冷凍機を使って、宇宙空間よりもさらに低い温度である100ミリケルビンに到達した。このような低温で熱を電圧に変換することは、通常、非常に困難だが、新しいデバイスとそのNernst効果の利用によってこれが可能になり、量子技術の重要なギャップが埋められる。

「寒いオフィスでラップトップを使っていると、PCは動作中に熱くなり、部屋の温度も上昇する。量子コンピューティングシステムでは、現在のところ、この熱がqubitsを乱すのを防ぐメカニズムはない。われわれのデバイスは、この必要な冷却を提供することができる」(Pasquale)。

物理学者としての訓練を受けたPasqualeは、この研究が重要であると強調し、これまで未解明の現象であった低温での熱発電変換に光を当てている。また、変換効率が高く、製造可能な電子部品を使用していることから、LANESチームは、このデバイスを既存の低温量子回路にすでに組み込めると考えている。

「これらの発見は、ナノテクノロジーの大きな進歩であり、ミリケルビン温度での量子コンピューティングに不可欠な高度な冷却技術の開発に有望である。この成果は、将来の技術のための冷却システムに革命をもたらすと信じている」とPasqualeは話している。