Science/Research 詳細

隠された武器でガン細胞を殺すナノロボット

July, 16, 2024, Stockholm--カロリンスカ研究所の研究チームは、マウスのガン細胞を殺すナノロボットを開発した。ロボットの武器はナノ構造に隠されており、腫瘍の微小環境にのみ露出しているため、健康な細胞は温存される。
この研究成果は、学術誌「Nature Nanotechnology」に掲載された。

カロリンスカ研究所の研究グループは、細胞表面にいわゆるデスレセプタを組織化し、細胞死に導く構造をこれまでに開発した。この構造は、6つのペプチド(アミノ酸鎖)が六角形に集合している。

「ペプチドのこの六角形のナノパタンは、致命的な武器になる。薬として投与すると、体内の細胞を無差別に殺し始め、良くない。この問題を回避するために、われわれはDNAで作られたナノ構造の中に武器を隠した」と、研究を主導したカロリンスカ研究所の医学生化学・生物物理学部門のBjörn Högberg教授は説明している。

「キルスイッチ」を作成
DNAを建築材料としてナノスケールの構造を構築する技術はDNA折り紙と呼ばれ、Björn Högbergの研究チームが長年取り組んできたものである。現在、チームはこの手法を使用して、適切な条件下でアクティブ化される「キルスイッチ」を作成した。

「われわれは、固形腫瘍の中やその周辺で見られる環境でしか露出できないように、武器を隠すことに成功した。これは、ガン細胞を特異的に標的にして殺すことができるナノロボットの一種を作成したことを意味する」(Björn Högberg)。

鍵となるのは、ガン細胞を取り囲む低pH、つまり酸性の微小環境であり、これがナノロボットの武器を活性化させる。試験管内の細胞分析では、ペプチド兵器は通常のpH7.4ではナノ構造内に隠れているが、pHが6.5に下がると劇的な細胞殺傷効果があることを示した。

腫瘍増殖の減少
次に、乳ガン腫瘍のあるマウスにナノロボットを注射する実験を行った。その結果、ナノロボットの不活性バージョンを投与されたマウスと比較して、腫瘍の成長が70%減少した。
「われわれは今、これが実際の人間の病気により近い、より高度ながんモデルで機能するかどうかを調査する必要がある。また、ヒトでテストする前に、この方法にどのような副作用があるかを調べる必要がある」と、この研究の筆頭著者、カロリンスカ研究所の医学生化学および生物物理学部門の研究者Yang Wangはコメントしている。

また、研究チームは、特定の種類のガンに特異的に結合するタンパク質やペプチドをナノロボットの表面に配置することで、ナノロボットをより標的にすることができるかどうかも調査する予定である。