June, 12, 2024, 和光--理化学研究所(理研)開拓研究本部 森本超短パルス電子線科学理研白眉研究チームの森本 裕也 理研白眉研究チームリーダー(光量子工学研究センター 超短パルス電子線科学理研白眉研究チーム 理研白眉研究チームリーダー)らの国際共同研究チームは、アト秒(as、1asは100京分の1秒)電子ビームを用いた実験により、電子回折過程を光によって超高速のアト秒で変調できることを発見した。
研究成果は、アト秒とオングストローム(Å、1Åは100億分の1メートル)という極限的な時間空間分解能を持つ電子顕微鏡の開発に向けた大きな一歩である。
電子回折は、物質の構造を原子レベルで精密に決定するための手法であり、電子顕微鏡や基礎科学の実験で広く一般的に用いられている。今回、理研とドイツ・コンスタンツ大学の国際共同研究チームは、アト秒という極めて短い時間幅の電子ビームを発生させ、その回折現象を調べた。実験の結果、測定試料である結晶薄膜にレーザ光を照射すると、電子ビームの回折効率(強度)がアト秒の時間スケールで変化することを発見した。また、照射するレーザ光を工夫することで、回折効率がレーザ光の強度に対して非線形的に変化する様子も観測された。これらの発見は、アト秒電子顕微鏡の開発における基礎的な知見であり、その開発により物質のミクロなスケールでの構造や機構の解明に役立つと期待される。
研究成果は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(5月22日付)に掲載された。