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高感度光ファイバジャイロ、活火山周囲の回転地震動感知

May, 30, 2024, ワシントン--イタリアCNR-INOの研究者は、イタリアのナポリにあるカンピフレグレイの活火山地域での地震によって引き起こされる地殻変動を高解像度でリアルタイムに監視するためのプロトタイプ光ファイバジャイロスコープを構築した。
この人口密集地の地震活動をよりよく理解することで、リスク評価が改善され、早期警報システムの改善につながる可能性がある。

「地震活動が発生すると、地表は直線運動と自転運動の両方を経験する。自転は一般的に非常に小さく、通常は監視されていないが、自転を捉えることができれば、地球の内部力学と地震源をより完全に理解することができる」と、イタリアのオッティカ国立大学(CNR-INO)の研究チームリーダ、Saverio Avinoは説明している。

Optica Publishing Groupの学術誌「Applied Optics」で、研究チームは、長さ2kmの光ファイバジャイロスコープに基づく回転センサからの予備的な観測データを報告している。このセンサは、5か月にわたって継続的にデータを記録しながら優れた性能を発揮し、小規模から中規模の局地的な地震からの騒音と地盤の回転を検出することができた。

ナポリの大都市には、人口約300万人と3つの活火山がある。エリア全体は、地震活動や火山活動の研究に使用される様々な物理的および化学的パラメータをリアルタイムで監視するマルチパラメトリックセンサのグリッドで覆われている。

「地表の自転の測定は、この複雑なセンサのモザイクに新たなタイルを加えることになる。この追加情報は、火山のダイナミクスの変化を検出するために不可欠な火山性地震のシグナルを包括的理解にも役立つ」と、国立地球物理学火山学研究所(INGV)の研究チームメンバーであるDanilo Galuzzoはコメントしている。

回転運動の測定
ジャイロスコープは、向きや角速度(物体の回転速度)の変化を検出して測定するために使用されるデバイス。たとえば、スマートフォンでは、単純なジャイロスコープがデバイスの向きと回転を検出して測定する。地震や火山活動による地震波の回転を測定するために、研究チームはサニャック効果に基づいてより複雑なジャイロスコープを開発した。
サニャック効果は、閉じたループの周りを反対方向に進む光が異なる移動時間を示す場合に発生する。これにより、ループの回転速度に依存する光の測定可能な干渉パターンが得られる。光の干渉を測定することで、角速度を高分解能で検出することができる。

「われわれの研究所は活火山地帯の中心部にあるため、自然の地震源を作り出している。われわれは毎日のように中小の地震を経験しているため、地殻変動に関する多くのデータを測定・取得し、それを連続的に解析して、カンピ・フレグレイ地域の地震・火山現象を研究することができる」(Avino)。

地震活動の捕捉
研究チームは、標準的な実験用機器とコンポーネントを使用して、光ファイバ回転センサのプロトタイプを組み立てた。そのテストのために、光通信に使われるものと同様の長さ2kmの光ファイバケーブルに光を注入した。ファイバケーブルは、入力と出力が接続されるループを形成し、切れ目のない連続した光路を作成し、直径25cmのアルミスプールに正確に巻き付けてコイルを形成した。

実験中、光学センサは、火山カルデラ(火山が噴火して崩壊したときに形成される大きな窪地)の上にある建物の管理された実験室環境に保管される。「このシステムの最初のバージョンは、他の最先端の光ファイバジャイロスコープに匹敵する解像度を示した。また、デューティサイクル(機器がデータを測定/集録する時間の割合)も非常に良好で、約5か月間連続してシステムを稼働させることができた」と、論文の筆頭著者Marialuisa Capezzutoは話している。同氏は、CNR-INOに所属し、実験装置に取り組んだ。

「プロトタイプのジャイロスコープは、回転運動の3つの方向成分のうちの1つしか測定できない。しかし、同じジャイロスコープを3つ組み合わせて、それぞれが異なる回転軸を捉えるようにすることで、3つの成分すべてを捕捉することができる」と、イタリア宇宙庁(ASI)のLuigi Santamaria Amatoはコメントしている。
研究チームは、単軸システムの解像度と安定性を向上させたら、3軸ジャイロスコープを設置する予定である。最終的には、Campi Flegrei地域に恒久的な地盤回転天文台を作りたいと考えている。