January, 6, 2015, Washington--世界初のユニバーサル量子コンピュータ設計競争において、窒素欠陥(NV)中心という特殊なダイヤモンド欠陥が重要な役割を担っている。
NV中心は、窒素原子と空孔で構成されており、これはダイヤモンド結晶において2つの隣接炭素原子を置き換えている。欠陥は量子情報を記録し、蓄積でき、光として転送できるが、その弱い信号を特定して抽出し転送するには、光を強める必要がある。
現在、ハーバード大学、カルフォルニア大学サンタバーバラ(UCSB)、シカゴ大学の研究チームは、ダイヤモンドNV中心の蛍光放出の効果的増幅で大きく前進した。これは将来の量子コンピュータで原子サイズの欠陥を利用する重要なステップである。この技術は、欠陥からの光信号を増幅するフォトニックキャビティ構造内にNV中心の極めて正確な位置決めができるかどうかに依存している。
NV中心は、スピンという特性で情報を蓄積できる不対電子を含んでいる。研究者は、レーザを照射したときにNV中心が放出する光の特定の周波数の強度を観察することで電子のスピン状態を「読む」ことができる。
室温では、光放出のこのパタンは多くの「サイドバンド」周波数と結合するので、解釈が難しくなっている。信号の最重要要素を増幅するために研究者はフォトニックキャビティ構造を利用することができる。フォトニックキャビティは、ナノスケール孔のパタンで構成されていて、NV中心の光放出を主周波数で増幅する。
NV中心は、その信号がフォトニックキャビティによって増幅され、量子コンピュータの量子情報の基本単位であるキュビット(qubit)になる。
フォトニックキャビティは、キャビティの共鳴場が最強の「ホットスポット」にNV中心信号があるときに信号増幅が最大になるが、原子サイズの欠陥をこのスポットと確実に一致させることは極めて難しい。
研究チームは、デルタドーピングという技術を使ってダイヤモンド欠陥の深さを制御することにより、目標に向かって重要な一歩を踏み出した。「スピン面をこれらの構造に統合することで、スピン-フォトン統合を達成し、将来の技術に向けて量子効果を利用できるようになる」とシカゴ大学のDavid Awschalom氏は言う。その技術によって、NV中心の可能な位置を、約200nm厚のダイヤモンド膜内に挟まれた約6nm厚層に閉じ込める。次に、フォトニックキャビティを作るために膜に孔を刻み込む。
この方法を使って研究チームは、NV中心から放出される光の強度を約30倍に強めることができた。
研究チームは、水平面の欠陥の位置も制御することでさらに放出光の強度を強めることができると考えており、現在完全3D制御を達成するために可能な方法に取り組んでいる。