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富士通、ガンタイプ分けなどのゲノム医療分野の課題を世界最高精度で解く、説明可能なAI技術を開発

May, 14, 2024, 東京--富士通は、テキストや画像、数値などの複数の異なる形式のデータを、知識を抽象化して体系化するナレッジグラフとしてAIを用いて自動的に統合し学習することで、その大規模データから高精度に原因や内容を判定、推定する説明可能なAI技術を開発した。
開発技術の有効性を確認するため、肺ガンのタイプ分けや乳ガン患者の生存期間予測など、医療分野の課題を含む複数のベンチマークで検証した。その結果、例えば肺ガンの主要な2つのタイプのタイプ分けを、病理画像情報にさかのぼってその要因を説明する形で高精度に判定支援できることを確認した。

また絵画、線描画、イラスト、写真など、対象物の描かれ方が全く異なる画像の特徴量を抽出して学習し、高精度に判定する技術も開発した。これらの技術を合わせることで、例えば病理画像などの十分な学習データを準備できない場合でも、ゲノム情報なども組み合わせて精度の高い判断を支援するAIを実現できることが期待される。

今後、これらの開発したマルチモーダル技術を、医療分野だけではなく様々な領域で適用できる汎用的な技術として開発を進め、2024年度中に、富士通が開発した様々な先端技術を試せる環境である「Fujitsu Research Portal」で公開する予定である。

開発技術について
1. 線描画や写真など、対象物の描かれ方が全く異なる画像データを統合して学習するAI技術
絵画、線描画、イラスト、写真など、対象物の描かれ方が異なる画像のデータを統合して学習させることで、例えば、写真のような新しい入力画像データに対して対象物に関する適切な判断ができる技術を開発した。新しい実用場面では、十分な量の入力画像データを取得することが困難な状況が頻繁に発生するが、開発技術はこの課題の解決に寄与する。この手法では、対象物の描かれ方に特有の特徴量と、対象物の描かれ方に関わらない対象物共通の特徴量を併せて学習する。これにより、学習側データにおいて、絵、線描画、イラストなど対象物の描かれ方が多様であっても、知識を学習して対象物に関する適切な判断を行うことができるようになる。

2. 異なる形式のデータを統合し、共通のナレッジグラフへ変換して学習する説明可能なAI技術
この技術を以下の医療領域に適用したところ、従来技術を越える性能を達成することができた。この技術は今後、対象物の描かれ方が全く異なる画像データを統合して学習するAI技術と合わせて、十分な学習データを準備できない病理画像の判定においても、ゲノム情報まで組み合わせた判断支援を行えるようになることが期待される。

肺ガンのタイプ分け
肺ガンの治療では腺ガンや扁平上皮癌などの肺ガンのタイプごとに治療法が確立されつつあり、正しい治療にはタイプ分けを正確に行うことが重要である。これまで、医師が目視で複数の情報をそれぞれ確認し診察を行っていたが、今回、この技術で肺ガン患者の病理画像とゲノム情報(コピー数異常情報)を、AIを用いて自動的に統合し、ガンのタイプの分けを行った。その結果、世界で標準的にベンチマークに使われるThe Cancer Genome Atlas(TCGA)のデータを用いて評価したところ、肺ガンのタイプ分けにおいて、従来87.1%が最高精度だったものを、この技術では92.1%という世界最高精度を達成した。これらのタイプ分けの際には、病理画像データにさかのぼって判断の根拠を示すことが可能である。

乳ガン患者の生存予測の判定
患者が治療方法を選択する際に治療ごとの生存期間を正確に予測できると、適切な治療方法を選択できる可能性が高まる。今回、乳ガン患者の画像データに加えてRNAデータと診療データを、AIを用いて自動的に統合して判断することで、The Cancer Genome Atlas(TCGA)のベンチマークデータを用いて評価したところ、乳ガン患者の生存期間予測タスクにおいて、従来最高精度が66.8%だったものを、この技術では71.8%を達成した。これらの生存期間の予測を支援する際には、画像データの中からその根拠を示すことが可能である。