Science/Research 詳細

機械的接合部のないフレキシブルデバイスを3Dプリントするためのインク

April, 25, 2024, Lausanne--EPFLの研究者は、局所的に機械的特性が変化する対象物を3Dプリントし、面倒な機械的接合部の必要性を排除するエラストマーベースのインクを備えた次世代のソフトアクチュエータとロボットをターゲットとしている。

ソフトロボティクスやウェアラブルデバイスに取り組むエンジニアにとって、軽量を維持することは常に課題である:重い材料は動き回るのにより多くのエネルギーを必要とし、ウェアラブルや義肢の場合は不快感を引き起こす。エラストマは、硬いものから伸縮性のあるものまで、様々な機械的特性で製造できる合成ポリマであり、そのようなアプリケーションで人気のある材料となっている。しかし、硬質からゴム状に変化する複雑な3D構造に成形できるエラストマを製造することは、これまで実現不可能だった。

「エラストマーは通常、短い長さのスケールで3次元すべてで組成が変わらないように鋳造される。この問題を克服するために、われわれはDNGEs(3Dプリント可能なダブルネットワーク粒状エラストマ)を開発し、その機械的特性を前例のない程度に変化させることができる」と、EPFLの工学部ソフトマテリアル研究所の責任者、Esther Amstadはコメントしている。

Amstad研究室のPh.D学生、Eva BaurはDNGEsを使って、硬い「骨」と柔軟な「肉」に囲まれた「指」のプロトタイプをプリントした。指はあらかじめ決められた方法で変形するようにプリントされており、物体を操作するのに十分な硬さを保ちながら、曲げたり伸ばしたりするのに十分なしなやかさを備えたデバイスを製造する技術の可能性を実証した。

これらの利点により、DNGEsは、重くてかさばる機械的な接合部のないソフトアクチュエータ、センサ、ウェアラブルの設計を容易にすることができると研究者は考えている。研究成果は、学術誌「Advanced Materials」に掲載された。

2つのエラストマネットワーク、2倍の汎用性
DNGEsの汎用性の鍵は、2つのエラストマネットワークの設計にある。まず、水中油型エマルジョン液滴からエラストマ微粒子を製造する。これらの微粒子は前駆体溶液に入れられ、そこでエラストマ化合物を吸収して膨潤する。次に、膨潤した微粒子を使用して3Dプリント可能なインクを作成し、バイオプリンタにロードして目的の構造を作成する。前駆体は3Dプリントされた構造内で重合され、物体全体を硬直化する第2のエラストマネットワークを形成する。

最初のネットワークの構成が構造の剛性を決定するのに対し、2番目のネットワークは破壊靭性を決定するため、2つのネットワークを個別に微調整して、剛性、靭性、耐疲労性の組み合わせを実現できる。ハイドロゲル(最先端のアプローチで使用される材料)よりもエラストマを使用すると、水を含まない構造を作成し、時間の経過とともに安定性が高まるという利点もある。さらに、DNGEsは市販の3Dプリンタを使用してプリントできる。

「われわれのアプローチの素晴らしいところは、標準的なバイオプリンタを持っている人なら誰でも使えることだ」とAmstadは強調する。

DNGEsのエキサイティングな応用の可能性の1つは、モーションガイドリハビリテーション用のデバイスである。ここでは、ある方向への移動をサポートし、別の方向への移動を制限する機能は非常に有用でありうる。DNGE技術がさらに発展すれば、補綴物や、外科医を支援するモーションガイドが開発されるかもしれない。ロボット支援による作物の収穫や水中探査など、遠隔地の動きを感知することも応用分野である。

Amstadによると、ソフトマテリアルズラボは、応答性材料や電気接続などの能動素子をDNGE構造に統合することで、このようなアプリケーションの開発に向けた次のステップにすでに取り組んでいる。