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Science/Research 詳細

生理学的状態を計測するウエアラブルセンサ

April, 16, 2024, Pasadena--カリフォルニア工科大学(Caltech)の医用工学助教授Wei Gaoは、汗を使って生理学的状態を識別・測定するウェアラブルセンサの革新的な設計シリーズの最新作として、ストレス反応を特徴付ける9つの異なるマーカーを連続的に監視する「電子皮膚」を考案した。
手首に装着する小型で薄い接着剤で、CARES(統合AI強化電子スキン)と呼ばれるこの電子皮膚を装着している人は、テスト中の干渉を最小限に抑えて通常の日常生活を自由に行うことができ、ベースラインレベルと急性ストレスレベルの両方を測定できる。

ストレスは掴みにくい概念である。「ストレスを感じる」とか「ストレスが多い」とか、身体症状にストレスを付加してしまうことがある。「ストレス性頭痛がする」「夜、歯ぎしりをする、ストレスに違いない」など。ストレスという用語は、あらゆる種類の感情、症状、行動、経験に適用できる。

1907年にウィーンで生まれた医師/化学者のHans Selyeは、ストレスを病状として定義した最初の人物である。倦怠感、食欲不振、やる気のなさなど、まったく異なる病気に苦しむ患者から聞いた同様の訴えに衝撃を受けた同氏は、すべての患者が共通して「病気であること」に反応しているのではないかと推測した。Selyeはストレスを「あらゆる要求に対する身体の非特異的反応」と定義した。

ストレスは、興奮やエネルギーとして肯定的に経験することもあれば、ショックや不安として否定的に経験されることもある。しかし、ストレスが感情的にどのように経験されるにせよ、その重症度と期間によっては、急性ストレスと慢性ストレスの両方がわれわれの心身の健康を損ない、われわれが望むように機能する能力を低下させる可能性があることは、現在広く合意されている。

ストレスは、Selyeが説明したように「非特異的」であるため、人がストレスを受けているかどうか、またはどの程度ストレスを受けているかを明確に示す単一のバイオマーカーはない。しかし、ストレスは様々な身体的反応を生み出す。それらをまとめると、自己報告とは無関係にストレスの尺度を提供することができる。GaoはCARESでこのコンステレーションをマニタリングしている。

「ストレスがあると、エピネフリン、ノルエピネフリン、コルチゾールなどのホルモンが血流に放出される」と、ヘリテージ医学研究所の研究者、ロナルド&ジョアン・ウィレンス奨学生でもあるGaoは説明している。「汗には、ブドウ糖、乳酸、尿酸などの代謝物や、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの電解質が豊富に含まれている。これらは、ウェアラブル汗センサでマイクロ流体サンプリングを使用する前に測定した物質である。CARESの新機能は、汗センサが、脈拍波形、皮膚温度、ガルバニック皮膚反応を記録するセンサと統合されていること。

新素材は、CARESの性能をさらに高める。従来の汗センサ用材料は、インクジェットプリンティングで効率的に製造でき、非常に希少な化合物でも正確に測定できたが、体液の存在下で徐々に分解されてしまった。ニッケルベースの化合物の導入は、ナトリウムやカリウムなどのバイオマーカーを検出するイオンベースのセンサに追加された新しいポリマと同様に、乳酸やグルコースを検出するセンサなどの酵素ベースのセンサの安定化に役立つ。「これらの新素材を追加することで、長期間動作におけるセンサの安定性が大幅に向上する」とGaoは報告している。以前の汗センサと同様に、CARESはバッテリー駆動で、Bluetooth経由で電話やコンピュータとワイヤレスで通信できる。

CARESのもう一つの重要なイノベーションは、機械学習の追加である。ストレスには様々な形態があり、様々な身体システムに影響を与える複雑な反応を刺激するため、豊富なデータを正確に解釈することが、CARESやその他のセンサの有用性の鍵となる。CARESデバイスを装着した被験者にストレスを誘発する実験では、センサが生理学的(脈拍など)と化学的(グルコースなど)のバイオマーカーの相互関係を正確に測定することが実証された。被験者は、激しい運動や激しいビデオゲームなどのストレスの多い状況にさらされる前後の不安や心理的ストレスの感情を自己報告するためのアンケートにも回答した。データは、ストレスの自己報告とCARESによって測定されたその物理化学的相関との間に明確な相関関係を示した。

「兵士や宇宙飛行士が経験するような厳しい作業環境によって引き起こされる高レベルのストレスや不安は、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性がある。ストレスの重症度を早期に発見することで、タイムリーな介入が可能になる。われわれのウェアラブルセンサは、機械学習と組み合わせることで、ストレスレベルのリアルタイム洞察を提供する可能性を秘めている」(Gao)。