April, 12, 2024, 東京--理化学研究所(理研)光量子工学研究センター 量子オプトエレクトロニクス研究チームの加藤雄一郎 チームリーダー(理研 開拓研究本部 加藤ナノ量子フォトニクス研究室 主任研究員)、藤井瞬 基礎科学特別研究員(研究当時、現 慶應義塾大学 理工学部 物理学科 助教)らの共同研究グループは、原子層ナノ物質を高Q値微小光共振器上に転写することで、従来制限されてきた2次の非線形波長変換が微弱な連続光レーザでも高効率に発生できることを実証した。
この研究成果は、原子スケールの2次元材料を活用した高機能フォトニクスデバイスへの応用につながると期待できる。
一般的に、高効率な光波長変換には強力なレーザ光と非線形光学材料が不可欠である。とは言え、それらを同時に小型化するのは容易ではなく、高機能波長変換デバイスの小型化と将来的な活用へ向けた課題とされてきた。
今回、共同研究グループは原子3個分の厚みを持つ単層の2次元材料を微小光共振器デバイスと組み合わせることで、材料固有の非線形光学特性を外部から変えられることを発見した。この手法を用いることで、ナノスケールの光デバイス開発の自由度を飛躍的に高めることが期待される。
今後の期待
この研究では、単層セレン化タングステンを高Q値微小光共振器に組み合わせることで、従来観測できなかった高効率な波長変換過程の誘起と制御を実証した。これはフォトニクス素子を2次元ナノ物質で修飾することで、材料固有の特性を打破し、さらなる高機能化につながることを示唆する重要な成果である。
この研究の手法を用いることで、ナノフォトニクス素子のデバイス設計の自由度が拡大することが期待される。また、強力な光電場と原子スケールの物質間での相互作用がもたらす新たな物性や量子的効果を観測するプラットフォームとしての展開も考えられる。
研究成果は、科学雑誌『Nano Letters』オンライン版(4月1日付)に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)