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Science/Research 詳細

EPFL、脳が体の位置や動きを感知する仕組み

April, 12, 2024, Lausanne--EPFLの研究者は、ニューラルネットワークを使用して、脳が体の動きと位置を「知る」ために使用する感覚である固有受容感覚を研究している。

脳は、体の様々な部分の位置や動きをどのように知っているか?この感覚は固有受容感覚と呼ばれ、「第六感」のようなもので、常に手足を見なくても自由に動くことができる。

固有受容感覚には、筋肉に埋め込まれたセンサの複雑なネットワークが関与し、手足の位置と動きに関する情報を脳に中継する。しかし、脳が筋肉から受け取る様々な信号をどのようにまとめているかについてはほとんどわかっていない。

EPFLのAlexander Mathisをリーダーとする新しい研究は、われわれの脳がどのようにして体の位置と動きのまとまりのある感覚を生み出すのかを探ることで、この問題に光を当てている。Cell誌に掲載されたこの研究は、ノースウェスタン大学のChris VersteegとLee Millerの実験データを用いて、Ph.D学生、Alessandro Marin Vargas、Axel Bisi、Alberto Chiappaによって実施された。

「感覚系は世界の統計を活用すべきだと広く信じられており、この理論は視覚系と聴覚系の多くの特性を説明できる可能性がある。この理論を固有受容感覚に一般化するために、筋骨格系シミュレータを使用して、分布センサの統計を計算した」とMathisは説明している。

研究チームは、この筋骨格系モデリングを使用して、上肢の筋紡錘体信号を生成し、「大規模で自然な動きのレパートリ」のコレクションを生成した。次に、このレパートリを用いて、脳幹と体性感覚皮質の一部を含む固有受容経路によって実行される計算に関する科学的仮説を反映した16の計算タスクで、数千の「タスク駆動型」ニューラルネットワークモデルをトレーニングした。

このアプローチにより、研究チームは、様々なニューラルネットワークアーキテクチャと計算タスクが、固有受容情報の「脳のような」表現の発達にどのように影響するかを包括的に分析することができた。その結果、四肢の位置と速度を予測するタスクでトレーニングされたニューラルネットワークモデルが最も効果的であることがわかり、人間の脳は、体の動きと位置を理解するために、分散した筋紡錘体の入力を統合することを優先していることが示唆された。

この研究は、神経科学におけるタスク駆動型モデリングの可能性を浮き彫りにしている。神経活動を直接予測することに重点を置いた従来方法とは異なり、タスク駆動型モデルは、感覚処理の根底にある計算原理に関する洞察を提供することができる。

また、固有受容感覚処理の理解が深まれば、義肢をより自然かつ直感的に制御できるようになり、神経補綴物の大幅な進歩につながる可能性があるため、この研究は神経科学における新しい実験の道を開くものである。