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QUICK スペースミッションが配備する量子通信向けサテライト

March, 26, 2024, Munich/Jena--量子コンピュータの開発が着実に進み、その性能が向上することで、将来的には現在の暗号プロセスを解読することが可能になる。
この課題に対処するために、ミュンヘン工科大学とイェーナ大学の研究者は、メッセージの傍受を防ぐために物理法則を適用する暗号化方法を開発する国際研究コンソーシアムに参加している。長距離通信を保護するため、QUICK宇宙ミッションは衛星を配備する。

インターネットを介して送信されるデータが、意図した受信者のみが読み取れるようにするにはどうすればよいか。現在、われわれのデータは、大きな数の因数分解は難しい作業であるという考えに依存する数学的方法で暗号化されている。しかし、量子コンピュータの能力が高まるにつれて、これらの数学的コードは将来的にはもはや安全ではない。

物理法則による暗号化
Tobias Vogl は、ミュンヘン工科大学の量子通信システム工学の教授であり、以前はイェーナ大学で研究を行っていた。同氏とそのチームは、物理学の原理に依存する暗号化プロセスに取り組んでいる。「セキュリティは、個々の光の粒子にエンコードされ、送信される情報に基づいている。物理法則では、この情報を抽出またはコピーすることはできない。情報が傍受されると、光の粒子はその特性を変化させる。これらの状態変化を測定できるため、送信されたデータを傍受しようとする試みは、将来の技術の進歩に関係なく、すぐに認識される」(Vogl)。

いわゆる量子暗号の大きな課題は、長距離のデータ伝送にある。従来の通信では、情報は多くの光粒子にエンコードされ、光ファイバを介して伝送される。ただし、1 つの粒子の情報はコピーできない。その結果、現在の光ファイバ伝送のように光信号を繰り返し増幅することはできない。このため、情報の伝送距離が数100kmに制限される。

他の都市や大陸に情報を送信するには、大気の構造を使うことになる。高度が約10kmを超えると、大気が非常に薄いため、光は散乱も吸収もされない。これにより、衛星を利用して量子通信をより長い距離に拡張することが可能になる。

量子通信用衛星
QUICKミッションの一環として、Tobias Voglとそのチームは、量子通信用の衛星を構築するために必要なすべてのコンポーネントを含むシステム全体を開発している。最初のステップとして、チームは各衛星コンポーネントをテストした。次のステップは、宇宙でシステム全体を試すこと。研究チームは、この技術が宇宙空間の条件に耐えられるかどうか、また、個々のシステムコンポーネントがどのように相互作用するかを調査する。衛星の打ち上げは2025年の予定。しかし、量子通信のための包括的なネットワークを構築するには、数百から数千の衛星が必要になる。

暗号化のためのハイブリッドネットワーク
この概念では、必ずしもすべての情報をこの方法を使用して送信する必要があるわけではない。そうすることは、非常に複雑でコストがかかる。データを物理的または数学的に暗号化できるハイブリッドネットワークを実装できることが考えられる。ミュンヘン工科大学の符号化と暗号学の教授、Antonia Wachter-Zehは、量子コンピュータでさえ解くことができないほど複雑なアルゴリズムの開発に取り組んでいる。将来的には、数学的アルゴリズムを使用してほとんどの情報を暗号化するだけで十分である。量子暗号は、銀行間の通信など、特別な保護を必要とする文書にのみオプションとして利用される。