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Science/Research 詳細

レーザ描画導波路内部の偏光制御に液晶を利用

March, 15, 2024, Jena--イェーナ大学の研究チームは、レーザ直描導波路に液晶層を埋め込むことで、光信号を制御および操作する新しい方法を開発した。この新しいデバイスは、偏光の電気光学制御を可能にし、フェムト秒で描かれた導波路に基づくチップベースのデバイスや複雑なフォトニック回路に新たな可能性を開くと見られている。

「導波路のレーザ描画と液晶による電気光学変調は、これまでこのような方法で組み合わされたことはなかった」と、ドイツのFriedrich Schiller University Jena、Dr Alessandro Alberucciは話している。「この技術を使用して、データセンタやその他のデータ集約型アプリケーション向けに大量の情報を処理できる新しいクラスの集積フォトニックデバイスを作成できることが期待されている。」

溶融石英導波路内に波長可変波長板作成
学術誌「Optical Materials Express」で、研究チームは、石英ガラス製導波路内に波長可変波長板を作成した方法を説明している。液晶に電圧が印加されると、その分子が回転し、導波路を透過する光の偏光が変化する。実験では、チームは2つの異なる可視波長での光偏光の完全変調を実証した。

「われわれの研究は、新しいタイプの光学機能を1枚のガラスチップの体積全体に統合する道を開き、これまで不可能だったコンパクトな3Dフォトニック集積デバイスを可能にする。フェムト秒で描かれた導波路のユニークな3D特性を利用して、各ピクセルが1つの導波路で個別にアドレス指定される新しい空間光変調器を作成することができる。この技術は、高密度光ニューラルネットワークの実験的実現にも応用できる可能性がある」とAlberucciは話している。

2つのキー技術を融合
フェムト秒レーザは、他の方法のように表面上だけでなく、材料の奥深くに導波路を描き込むことができるため、1つのチップで導波路の数を最大化する有望なアプローチである。このアプローチでは、透明な材料の内部に強力なレーザビームを集光する。光強度が十分に高い場合、ビームは照射下の材料を変更し、マイクロメートル精度の一種のペンのように機能する」。

「フェムト秒レーザ描画技術を使用して導波路を作成することの最も重要な欠点は、これらの導波路内の光信号を変調するのが難しいことである。完全な通信ネットワークには、送信信号を制御できるデバイスが必要であるため、われわれの研究は、この制限を克服するための新しいソリューションを模索している」(Alberucci)。

新しい論文では、導波路内に液晶層を埋め込むことで、2つの基本的なフォトニック技術を組み合わせている。導波路内を伝搬するビームが液晶層に入射すると、電界が印加されると光の位相と偏光が変化する。次に、修正されたビームは導波路の2番目のセクションを通過するため、変調された特性を持つビームが伝搬する。

「ハイブリダイゼーションにより、同じデバイスで両方の技術の利点、つまりガイド効果による大量の光と、液晶に関連する高度な調整可能性にアクセスできる。この研究は、液晶の特性を、体積全体に導波路が埋め込まれたフォトニックデバイスの変調器として利用する道を開くものである」(Alberucci)。

ハイブリッドアプローチの利点
フェムト秒レーザが描き込んだ導波路の光変調は、従来、導波路を局所的に加熱することで実現していたが、今回、液晶を用いることで、偏光を直接制御することが可能になった。「われわれのアプローチには、消費電力の低減、バルクの単一導波路に独立して対処できる可能性、隣接する導波路間のクロストークの低減など、いくつかの潜在的な利点がある」とAlberucciは説明している。

デバイスをテストするために、研究チームは導波路にレーザ光を注入し、液晶層に印加する電圧を変化させて光を変調した。出力で測定された偏光は、理論によって予測されたとおりに変化した。また、液晶と導波路を一体化することで、液晶の変調特性が変わらないこともわかった。

チームによると、この研究は概念実証にすぎず、技術が実用化される準備が整うまでには、さらに多くの作業を行う必要がある。たとえば、現在のデバイスはすべての導波路を同じ方法で変調するため、各導波路で独立した制御を実現するように作業している。

(詳細は、https://www.uni-jena.de