Science/Research 詳細

EPFL研究者、DIY構造化照明顕微鏡

March, 13, 2024, Lausanne--EPFLの科学者は、標準的な光学顕微鏡を、細胞、オルガノイド、胚の超解像3D画像を生成できる装置に変えるアドオンを構築するためのガイドを公開した。

何百年もの間、光学顕微鏡は、細胞、バクテリア、酵母の動きを研究したい科学者が利用できる唯一のツールだった。しかし、光の回折により、100nm未満の解像度で物体を観察することは不可能だった。回折バリアとして知られるこの物理的限界は、約15年前に超解像顕微鏡法の開発によってようやく克服され、科学者は生きた標本の奥深くを覗き込み、細胞小器官の挙動を研究し、細胞がウイルス、タンパク質、薬物分子とどのように相互作用するかを観察できるようになった。構造化照明顕微鏡(SIM)として知られるこれらの新しい方法の1つは、低光子露光で高解像度と高コントラストの画像を生成するため、研究者から高く評価されている。ナノメートル分解能の電子顕微鏡の出現にもかかわらず、光学イメージングは、機器の面でより柔軟性が高く、科学者が通常の発生条件で生きたサンプルを観察できるなど、ライフサイエンス研究において重要な役割を果たし続けている。とは言え、コストと可用性の制約により、SIMイメージングは多くの人にとって手の届かないままである。この問題を回避するために、EPFLの工学部(STI)のInterfaculty Institute for Bioengineering(IBI)内のEPFLのLaboratory for Bio- and Nano-Instrumentation(LBNI)の科学者は、安価な市販のコンポーネントを使用して、標準的な光学顕微鏡を高解像度デバイスに変換する方法を開発した。チームは、一連のビデオチュートリアルとともに、オープンアクセス形式の詳細なハウツーガイドを公開している。

専門家でなくても作って使えるコンパクトな顕微鏡
SIMは、従来の光学顕微鏡で見ると通常はぼやけて見える高空間周波数の領域を再構成することで、回折の障壁を克服する。この方法では分解能が2倍になり、直径100nmの小さな細部を観察することができる。SIMは、グリッドなどの標準的な照明パターンをサンプルに投影することで機能する。異なる照明パターンで撮影された画像は、アルゴリズムによって処理され、モアレ効果を利用してより高解像度の再構築が行われる。

2019年、Ph.D学生、Mélanie Hannebelleは、研究のためにまさにこの機能を備えた顕微鏡を必要としていた。そこで同氏は、LBNIのために自分で作るというアイデアを思いついた。他の研究室でも同様の装置が作られていたが、複雑で扱いにくく、再現が困難だった。Hannebelleは、専門家でなくても構築して使用でき、費用のかかる維持費やメンテナンスを必要としない、よりコンパクトな代替品を設計したいと考えていた。「われわれは、教室で目にするビデオプロジェクタの製造に使用されている種類の電子部品を調達した。サンプルに光のパターンを投影できるように、それらを変更して配置した」と、LBNIのGeorg Fantner教授は説明している。

ライフサイエンス研究者による試験と承認
LBNIのチームは、新しい顕微鏡が実行可能で実用的な代替手段であるかどうかを調べたいと考えていた。そこで、他のラボにテストを依頼した。チームは、Andrew Oates教授、Matthias Lutolf教授、John McKinney教授、Aleksandra Radenovic教授のグループとチームを組み、実際の研究サンプルで装置をテストした。「われわれの同僚はわれわれに質問をし、彼らのニーズについて話し、彼らのサンプルをわれわれと共有した。われわれは、その装置が彼らの研究に役立つかどうか、また、どのように役立つかを知りたかった」(Fantner教授)。フィードバックは圧倒的に肯定的であり、チームはEPFLオープンサイエンスの助成金を確保し、オープンハードウェア形式で機器を共有できるようにした。この装置を他のラボでも再現できるものに変え、プロセスの途中であきらめないほど詳細な指示を出すことは、骨の折れる時間のかかるプロセスであることが判明した。研究室のもう一人のPh.D学生Esther Raethは、オンラインで公開するために、詳細な手順、機器リスト、ビデオチュートリアルをまとめた。「われわれのシステムの唯一の前提条件は、高品質の光学顕微鏡である。これは、ほとんどの研究室がすでに持っているものだ」(Fantner教授)。

OpenSIMは、より高度な機器との競争を目的としていない。たとえば、このアプローチは市販の同等品よりも変調コントラストが低いため、理論上の2倍と比較して分解能ゲインが1.7倍に制限される。とは言え、SIM技術をたまにしか必要としないラボや、商用グレードのモデルに50万スイスフラン以上を費やす余裕がないラボがSIM技術を利用できるようにするという、本来の目的を果たしている。LBNIチームは、その研究をより多くの科学者グループに提供し、経験を共有するためのユーザのコミュニティを構築するための取り組みを推進している。「この論文が BioRxiv.org で共有されて以来、このアイデアに興味を持ち、独自のOpenSIMを構築する方法についてもっと知りたいという何人かの人から連絡を受けた」とFantner教授は話している。