UW–Madison、機能的人間脳組織を初めて3Dプリント

February, 28, 2024, Madison--ウィスコンシン大学マディソン校(UW-Madison)の科学者チームは、典型的な脳組織のように成長し、機能する初の3Dプリント脳組織を開発した。

これは、脳を研究し、アルツハイマー病やパーキンソン病などの幅広い神経疾患や神経発達障害の治療に取り組んでいる科学者にとって重要な意味を持つ成果である。

「これは、ヒトの脳細胞と脳の一部がどのようにコミュニケーションしているかを理解するのに役立つ非常に強力なモデルになる可能性がある」と、UWマディソン校ワイズマンセンターの神経科学および神経学のSu-Chun Zhang教授は話している。「幹細胞生物学、神経科学、それに多くの神経疾患や精神疾患の病因に対する見方を変える可能性がある」

ZhangとZhangの研究室の科学者Yuanwei Yanによると、脳組織をプリントする以前の試みの成功を制約していたのはプリンティング法だった。新しい3Dプリンティングプロセスの背後にいるグループは、学術誌「Cell Stem Cell」にその方法を説明している。

研究チームは、従来の3Dプリンティングのアプローチである層を垂直に積み重ねるのではなく、水平に展開した。チームは、iPS細胞から成長したニューロンである脳細胞を、以前の試みよりも柔らかい「バイオインク」ゲルに配置した。

「組織はまだ十分に保持できる構造を持っているが、ニューロンが互いに成長し、互いに会話を始めるのに十分な柔らかさを持っている」と、Zhang。

細胞は、テーブルに並べられた鉛筆のように隣り合って置かれる。

「われわれの組織は比較的薄いままなので、ニューロンは成長培地から十分な酸素と栄養素を簡単に得ることができる」(Yan)。

結果はそれ自体を物語っている-つまり、細胞は互いに話すこと(情報交換)ができる。プリントされた細胞は培地を通り抜けて、プリントされた各層内および層間で接続を形成し、人間の脳に匹敵するネットワークを形成する。ニューロンは、通信し、信号を送信し、神経伝達物質を介して相互に作用し、プリントされた組織に追加されたサポート細胞と適切なネットワークを形成することさえある。

「大脳皮質と線条体をプリントすると、極めて衝撃的な結果が得られた。脳の異なる部分に属する異なる細胞をプリントした場合でも、それらは非常に特殊で特異的な方法で互いに対話することができた」(Zhang)。

このプリンティング技術は、脳の研究に使用される小型の臓器である脳オルガノイドには見られない精度(細胞の種類と配置の制御)を提供する。オルガノイドは、組織化と制御が少なくなる。

「われわれの研究室は、いつでもほとんどすべてのタイプのニューロンを作製できるという点で、非常に特殊である。そうすれば、ほぼいつでも好きな方法でつなぎ合わせることができるのである。設計によって組織をプリントできるため、人間の脳ネットワークがどのように機能しているかを調べるための明確なシステムを持つことができる。特定条件下で神経細胞がどのように相互作用するかを非常に具体的に調べることができるのは、必要なものを正確にプリントできるからである」(Zhang)。

その特異性から柔軟性が得られる。プリントされた脳組織は、ダウン症の細胞間シグナル伝達、健康な組織とアルツハイマー病の影響を受けた隣接組織との相互作用、新薬候補の試験、さらには脳の成長の観察にも使用できる。

「これまでは、一度に 1 つのことに目を向けることが多かったため、重要な構成要素を見落とすことがよくあった。われわれの脳はネットワークの中で動いている。われわれは脳組織をこのようにプリントしたい。と言うのは、細胞が単独では機能しないからである。細胞はお互いに話す。これがわれわれの脳の仕組みであり、真に理解するためには、このように一緒に研究する必要がある。われわれの脳組織は、Waisman Centerの多くの人々が取り組んでいることのほとんどすべての主要な側面を研究するために使われる可能性がある。脳の発達、人間の発達、発達障害、神経変性疾患などの根底にある分子メカニズムを調べるために使用できる。

また、新しいプリンティング技術は、多くの研究室が利用できるようになるはずである。組織を健康に保つために特別なバイオプリンティング装置や培養方法を必要とせず、顕微鏡、標準的なイメージング技術、およびすでに現場で一般的な電極を使用して詳細に研究することができる。

とは言え、研究チームは、バイオインクをさらに改良し、プリントされた組織内の細胞の特定の配向を可能にするために機器を改良することで、特殊化の可能性を探りたいと考えている。

「現在、われわれのプリンタは卓上型で商品化されている。特定の種類の脳組織をオンデマンドでプリントできるように、いくつかの専門的な改善を行うことができる」とYanは話している。
(詳細は、https://news.wisc.edu/)