Science/Research 詳細

半導体量子ドット中の電子とテラヘルツ電磁波との強結合状態の実現に成功

February, 26, 2024, 東京--東京大学 生産技術研究所の黒山和幸助教、平川一彦教授らによる研究グループおよび、同大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦 特任教授、權晋寛特任准教授らによる研究グループは、スプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ帯域に共鳴周波数を持つ半導体基板上に作製した光共振器と半導体量子ドット中に閉じ込めた電子を強く相互作用させ、光と電子の両方の性質を持つハイブリッドな量子結合状態を生成することに成功した。半導体量子ドット中の電子とテラヘルツ電磁波との強結合状態の実現に成功

研究では、GaAs半導体量子ドットの中に閉じ込められた電子と半導体基板上に作製されたテラヘルツ光共振器との間の強結合状態を、量子ドットを流れる電流を測定することによって観測した。先行研究では、GaAs半導体中の多数の2次元電子集団とテラヘルツ光共振器の間で強結合状態が実現することが知られていた。しかし、量子情報処理技術などへの応用を見据えると、電子集団ではなく、単一の電子と光共振器との強結合状態の実現が望まれている。
研究では、GaAs 2次元電子系上に半導体量子ドットを形成することで、半導体量子ドットの中の電子数を数個程度に制御したうえで、電子とテラヘルツ光共振器との強結合状態の観測に成功した。この研究成果は、光と物質の結合状態に関する物理の解明に大きく貢献するだけでなく、半導体量子ドットを基盤とした固体量子コンピュータの大規模化に繋がる可能性を秘めている。それにより、従来よりもはるかに高速な情報処理技術や、高温超伝導物質の探索、高機能な化学材料の開発などにつながると期待される。

(詳細は、https://www.iis.u-tokyo.ac.jp)